シークレット ウインドウ
監督:デヴィッド・コープ
出演:ジョニー・デップ/ジョン・タトゥーロ/マリア・ベロ/ティモシー・ハットン/チャールズ・S・ダットン/レン・キャリオー
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4
【人気作家に理不尽な要求を突きつける男の正体は?】
妻を寝取られてから6か月。湖畔の別荘で愛犬チコと暮らす人気作家モート・レイニーのもとへ、シューターと名乗る男が訪れる。「お前は俺の作品を盗んだ」。彼が突きつけた原稿は確かにモートが書いた『秘密の窓』と酷似していたが、書き上げたのはモートの方が先。だがシューターは「結末を書き直せ」と迫り、チコを殺すなど非情な手段に訴える。妻エイミーの浮気相手テッドの差し金と読んだモートは探偵のケンに処理を依頼するが……。
(2004年 アメリカ)
【ストーリー以外の部分が見どころ】
どんな映画でも自分のモノにしてしまう力を持つジョニー・デップ。本作でも、ぶつぶつと呟く独り言、ハンドルを小刻みに叩く指先、口を大きく開けてアゴの筋肉を伸ばすクセなど、随所で“らしさ”を見せてくれる。
が、謎の男シューターを演じたジョン・タトゥーロが、もっと美味しい。忽然と現れ、暗がりに立ち、表情がアップになることはほとんどなく、少し離れた位置から冷ややかな視線を送ってモートを追い詰めていく。強いミシシッピ訛りで、歩く背中はまさしく田舎者。
登場人物が少なく、しかも上記ふたり以外はみなフツー。実質デップとタトゥーロのキャラクターおよび絡みが見どころであり、その絡みがストーリーを進める役割を担ってもいるのだから、タトゥーロの存在感の濃さは不可欠な要素だろう。
もうひとつの見どころがカメラワーク。オープニング、湖面をなめるように映し、そのまま二階の窓から別荘の屋内へ入り込み、階段を下ってソファに寝そべるモートへと至るワンカットは迫力たっぷり(CGが使われているが、一見しただけではわからない)。ほかにも、見下ろす視線、画面に覆い被さる手、クライマックスのモートの狂気など、アングルや合成や編集のテクニックを駆使して、なかなか面白い絵を作り出している。
セオリー通りの効果音や音楽の使いかた(ずぅぅぅぅんと盛り上げていって、急に驚かせる)ともあいまって、飽きさせない画面だ。
が、ストーリー(オチ)は……。
いや、思い返してみると、それなりに伏線も散りばめられていて納得できなくはない。1つのお話としてのまとまったものにもなっている。ラストまで飽きずに観ることができる。けれど、いまさらこのネタを、しかもかなりストレートに持ち出してくるのはどうだろう。
脚本・監督のコープが過去に脚本を手がけた作品は『永遠に美しく』(ロバート・ゼメキス監督)や『スパイダーマン』(サム・ライミ監督)、『パニック・ルーム』(デヴィッド・フィンチャー監督)と、ゴチャゴチャとして焦点がボケていたものばかり。あるいは『ミッション:インポッシブル』と『スネーク・アイズ』(いずれもブライアン・デ・パルマ監督)のように、ドンデン返しの処理が甘い作品。『ジュラシック・パーク』(スティーヴン・スピルバーグ監督)は説明過多だった。
どうやら、役者+画面+音楽のコーディネーション能力は高く、監督としての技量はあるが、ストーリー作りは“雑”という人物に思える。スピルバーグの超話題作『宇宙戦争』の脚本家としてクレジットされていることが、心配でならない(と書いたのが2005年4月末。杞憂で良かった)。
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