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2005/09/02

お父さんのバックドロップ

監督:李闘士男
出演:神木隆之介/宇梶剛士/南方英二/南果歩/田中優貴/生瀬勝久/エヴェルトン・テイシェイラ

30点満点中14点=監2/話2/出5/芸3/技2

【プロレスなんか大きらい! お父さんなんか大っきらい!】
 ローカルで弱小で貧乏、試合会場には閑古鳥の新世界プロレス。窮地を救うためエース格の下田牛之助はヒール(悪役)に転向、他団体との対抗戦もおこなわれ、盛り返しの兆しを見せる。でも牛之助のひとり息子・一雄はプロレスもお父さんも大嫌い。試合巡業のため入学式にも運動会にも来てもらえないし、いまは亡きお母さんが入院したときもお父さんは試合をしていたからだ。牛之助は一雄からの尊敬を勝ち取るべく、無謀な闘いに挑む。
(2004年 日本)

【小さなスケールの中で懸命の演技陣】
 ショタなのか? オレってホモショタなのか? そう心でつぶやく今日このごろ。38歳の男が「神木くん萌え~」なのは自分でも気持ち悪いと思うが、可愛いんだから仕方ない。神木くんが泣くだけで哀しくなり、頬をぶたれると痛みを感じる。それほどにノメリこむ。ビバ、クノール!

 しっかし、なんでこんなにも、この少年にトキメクんだろう。ふと思いついて押入れの奥から古いアルバムを引っ張り出したら、謎は氷解。
 お、オレの小さい頃って神木くんにソックリじゃん……。
 逆か。神木くんが、私の幼少期に似ているのだ。妻は鼻で笑って小バカにするし、友人からはブーイングを浴びせかけられたので「オレの小さい頃=神木くんの3割引き」とか「オレの小さい頃の写真(プロフィールページに掲載してみました)=神木くんを50枚撮ったうち、もっとも写りの悪いカット」くらいにしておくが、つまりはナルシシズムとノスタルジアによる萌え。
 それもまた気持ち悪いっちゃあ気持ち悪いが。

 ともかく、本作でも神木くんの魅力を十分に味わうことができる。見上げる目の演技。透明感のある、泣き出す寸前のような声。華奢だが意思を感じさせる立ち姿。ここまでナチュラルに“懸命さ”を醸し出せるタレント(才能)は、そう多くない。親友の哲夫や社長との掛け合いも良く、3人並んだフルショットは、実にいいバランスでフレームの中に収まる。ラストでちょっとムリめの関西弁を披露してくれるのも楽しい。

 神木くんに限らず、この映画の魅力は役者にあるといえる。
 宇梶剛士は豪放な中にもこだわりを持つロートルレスラーを好演。ルー・テーズに憧れるという設定そのままに「ヘソで投げる」バックドロップ(これが肝心)を見せてくれる。
 祖父・松之助役の南方英二も持ち前のトボケた味を全開にしていい感じ。彼が語る「大人にもいろいろ事情があるんじゃ。そのへん子供がわかってやらんかい」というのも、このオトボケ爺がいうからこそ、都合のいい詭弁ではなく、親子関係の真理を適確に突いたセリフに聞こえる。
 金本英恵を演じた南果歩の女優魂にも脱帽。身体にカビまで生やしての熱演だ(笑)。関西弁に違和感がないなぁと思ったら、尼崎出身とのこと。生活に疲れているが完全にはやつれきっていないという微妙な役柄をこなし、これ以上ないキャスティングだろう。

 ただ、こうした演技陣の受け皿となる演出・物語が冴えない
 まず画面が全般に薄暗くて表情の判別がつきにくく、せっかくの演技を捉え切れていない。カメラと人物の距離感、人物の配置などにテレビドラマっぽさ、あるいはバラエティ番組っぽさも漂って(その路線で育ってきた監督と知って納得)、劇場用映画のスケールに達していない。登場人物たちの日常を描くのはいいとしても冗漫なカットが多かったように思う。
 セリフの音量バランスが悪くて聴き取りづらかったり、BGMや効果音が安っぽかったり、音関係も水準以下だろう。

 ストーリーは、ハッキリ浅い。『チャンプ』(フランコ・ゼッフィレッリ監督)の設定を「父を尊敬する子」から「父を嫌う子」に置き換えるなど、古くからある父と子の物語の焼き直しの手法はまずまずとして、牛之助の父としての苦悩、一雄の子供としての心の揺らぎなどをたっぷり描いてこそ感動的になるお話のはず。なのに、その部分を説明台詞に頼ったり急ぎすぎたりして、まるっきり不足。たとえありきたりとしても、参観日に来ない牛之助、父親に逆上がりを教えてもらう生徒とひとりで練習をする一雄の対比など、一雄の寂しさを描写するシーンを盛り込むべきだったろう。
 また牛之助と亡き妻、牛之助と英恵の関係も掘り下げられず、ふたりの女性は“出てただけ”にとどまっている。
 空手チャンピオンが都合よく来日、その話題の主にたやすく挑戦できたりなど展開も唐突だ。

 ごちゃごちゃして油っぽい焼肉店や華のない街並み、安アパート、クラスにいる“いちびり”や「生理、ええなぁ~」など、微笑ましい大阪風情を出せていたことは評価したいし、一雄が大切にしていたお母さんの思い出をお父さんのせいでアッサリ失ってしまう展開には身につまされるものがある。だが、物語のコアとなる父と子の関係が描き込まれていないのが痛い。

 それでも、出演者の好演・力演に引っ張られて感情移入はできる。拙いプロダクション(映画作り)を、熱のこもったアクション(演技)が救った映画ではないだろうか。

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コメント

どうもです。

本作の魅力って“味”だったなぁと、いまになって思ったりします。

で、本作から4年後時点の神木くんは、見た目的にどんどん私から乖離しているので安心もしています。

投稿: たにがわ | 2008/10/24 10:54

こんにちは。

僕は、好きな中島らもの原作なので、単純に、楽屋褒めのようなノリで書いてます。

でも、神木くんと幼い時にそっくりだったというのは、相当な殺し文句にも思えるし、逆に神木くんファンが現在の谷川さんを見て(知らないけど)神木君の未来を想像するまいとギャーと逃げていくのか、どちらかかもわかりませんね。

投稿: kimion20002000 | 2008/10/24 01:26

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