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2005/09/05

ラブ・アクチュアリー

監督:リチャード・カーティス
出演:別掲

30点満点中19点=監4/話4/出4/芸4/技3

【聖なる夜に、いくつもの愛が紡がれる】
 作家のジェイミーは言葉の通じないスペイン人メイドのオーレリアとコミュニケーションを図ろうと懸命。画商のマークは親友ピーターの妻ジュリエットに横恋慕。秘書ミアに迫られる会社社長のハリーは、部下のサラとカールの恋を後押しする。英国首相のデヴィッドはナタリーへの想いを募らせ、最愛の人を失くしたダニエルは義理の息子サムの初恋を見守る。クリスマスが間近に迫るイギリスで、いくつもの愛が同時進行していく。
(2003年 イギリス/アメリカ)

【愛という関係の行きつく先を考えさせる】
 あくまで自分勝手で曖昧なイメージだが、hanakoを愛読し、ミスチルを聴き、グッチを持たず、代官山に住むことを夢見ながらオーストラリアワインを飲む29歳のOLがいて、その生活の中に入り込んでくるものの中でもセンスのいいアイテム。そういう映画だ。
 つまりオシャレで、どこかフワフワしているけれど、主張がある作品。

 まず画面がいい
 アトリエや書斎など比較的ゴチャゴチャした背景なのに人物がクッキリと浮き上がり、雑踏の中でも対象とする人を認知させる、イギリスらしい輪郭のカッチリした絵。だが同時に、ふわりとした温かな空気も感じさせる。向き合って会話するふたりを相手ナメで撮る安直なカットも多いが、画面の中のどの位置に誰を置くかというレイアウトがスマートで、孤独感の漂うロングショットと寄りのバランスも秀逸だ。
 ビートルズにノラ・ジョーンズにジョニ・ミッチェルと多彩に散りばめられた音楽も、ノリが良く、あるいはしっとりと流れ、雰囲気ある画面をさらに引き立てる。サウンドトラックCDを売ろうとする思惑は見えるが、ここまで一貫して「hanakoを愛読し……」的な人向きの、仕事中のBGMに最適な軽い楽曲を揃えられると、買ってみようかという気にさせられる。

 単にファッショナブルなだけの映画ではない。結婚式も葬儀もある、ポルノ俳優の恋愛がもっともピュアだったりする、都合のいい恋もあれば動機のハッキリしない愛もある、きちんとケリをつけられない関係もある。一般的日本人から見ればいくぶんスタイリッシュに過ぎる気もするが、いろいろなカタチの愛、「人生って、愛って、そういうものなんだよね」と思わせる出来事や関係がいっぱいに詰め込まれていて、ちゃんと中身のある(というか、考えさせる)作品になっているのだ。
 エピソードの語り口にも澱みがない。必要以上を描写することなく、けれど必要なこと……作家ジェイミーにプロポーズされたときのオーレリアの返答、夫ハリーの上着から浮気の証拠を見つけたカレンの表情、結婚式の介添え人マークが撮影したビデオを見たときの新婦ジュリエットの反応、当初は養父を「ダニエル」と呼んでいたサムがやがてパパと呼ぶ展開……などはしっかりと見せる。

 セリフからはムダが省かれているが、物語の進行を助けるには十分な密度を持ち、と同時にニヤリとさせる。なにげないひとことが後になって効いてくることもある。中でも感心させられたのが「レオとケイトの助けを借りよう」の場面。きっとダニエルは亡き妻とこうしていたんだろうと思わせて、ほのぼのとさせてくれる。

 いくつものエピソードが同時進行するため序盤はやや混乱して作品内に入り込みにくいし、各エピソードの結び付けかたも「ミアの隣人がナタリー」など行き当たりばったりというか、詰め切れてない感は否めない。映画的・映像的な衝撃も薄いといえる。が、じゃあTVドラマで十分かといえば、間にCMが挟まれるとこのギッシリ感が拡散されて、それもまたマズい。
 過不足なく、流れるように135分をまとめた、これが初監督作とは思えないほど収まりのいい作品だ。

 こうした収まりの良さを生み出したのは、画面作りや音楽、演出以上に、キャスティングの力が大きいようにも思える。
 ヒュー・グラントは首相としては甘すぎるが、それが逆に彼の決意を示すシーンで生きてくる。カレン役のエマ・トンプソン、ジェイミー役のコリン・ファースの“フツー”具合いもいい。
 新婦ジュリエット役のキーラ・ナイトレイ、首相秘書ナタリーのマルティン・マカッチョン、女優ジュディのジョアンナ・ペイジ、誘惑する女ハイケ・マカッシュ、そして突如登場する某モデルやチョイ役のエリシャ・カスバートなど、パーフェクトではないがキュートで可愛げのある女性たちが上手く配されている。
 少年サムを演じたトーマス・サングスター君も上手くて可愛いが、彼に思いを寄せられるジョアンナ役オリヴィア・オルソンも、また驚き。試写のときに誰もが彼女の歌を吹替えだと思い、彼女自身の声であることをわかってもらうためブレスを強調するなどの音声処理が施されたというが、それだけのケアをさせるくらい、その歌声は魅力的。こういうタレントがポコっと出てくると「日本と違って、欧米にはポップスの遺伝子が生きているんだな」と感心させられる。

 そして本作の主役ともいえる、元ロックスターのビリー。ビル・ナイは、ミック・ジャガー+キース・リチャーズというとんでもないこのキャラクターを見事なオーバー&アッパーアクションで演じ切り、多くの登場人物に埋もれることもなく、この映画はこのキャラクターのためにあると思わせるだけの存在感を示した(と思ったらやっぱり、LA批評家協会賞や英アカデミー賞の助演男優賞を獲得しているのね)。
 彼がいうセリフが、本作のすべてを象徴している。
「いろいろ文句もいったけど、俺とお前の人生は、悪くない」
 不器用だったり性急だったり真っ直ぐだったり、さまざまな愛を紡ぐ本作の登場人物たちも、何十年か後、同じようにいえる未来を誰かと迎えられるだろうか。その日へ向けての一歩を示した、そんな映画である。

LA01

マーティン・フリーマン……ジョン
ジョアンナ・ペイジ……ジュディ
アブダル・サリス……トニー
クリス・マーシャル……コリン
ルシア・モニス……オーレリア
コリン・ファース……ジェイミー
キウェテル・イジョフォー……ピーター
アンドリュー・リンカーン……マーク
キーラ・ナイトレイ……ジュリエット
ハイケ・マカッシュ……ミア
ローラ・リニー……サラ
ロドリゴ・サントロ……カール
アラン・リックマン…… ハリー
エマ・トンプソン……カレン
ヒュー・グラント……デヴィッド
マルティン・マカッチョン……ナタリー
リーアム・ニーソン……ダニエル
トーマス・サングスター……サム
オリヴィア・オルソン……ジョアンナ
グレゴール・フィッシャー……ジョー
ビル・ナイ……ビリー

ローワン・アトキンソン……宝石店員
ビリー・ボブ・ソーントン……合衆国大統領

※相関図は公式サイトの同様の図をもとに作成

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受信: 2005/10/02 03:31

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受信: 2011/12/22 13:15

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