バックドラフト
監督:ロン・ハワード
出演:カート・ラッセル/ウィリアム・ボールドウィン/ロバート・デ・ニーロ/スコット・グレン/ジェニファー・ジェイソン・リー/レベッカ・デモーネイ/ドナルド・サザーランド/J・T・ウォルシュ
30点満点中18点=監4/話3/出3/芸4/技4
【シカゴを悩ませる2つの出来事に兄弟が挑む】
連続爆破事件と市による規模縮小策に直面するシカゴ消防隊。勇猛で名を馳せる17小隊を率いるのは、父の遺志を継いだスティーブンだ。そこへ、根無し草のような生活を送っていた弟のブライアンが消防士となって戻ってくる。弟を危険な目に遭わせたくないあまりに厳しくあたる兄。そんな兄に反発しつつも追い越せないと悟ったブライアンは、市会議員スウェイザクの依頼で、リムゲイル調査官とともに連続爆破事件捜査の任に就く。
(1991年 アメリカ)
【決めるべきポイントを心得た作り】
ロン・ハワードは、長らく好きな、というか、信頼できる監督のひとり。20年近く前に書いた『ウィロー』の感想では「映画はこうあるべきだ」とそのエンターテインメント性を絶賛しているし、最初に観た『コクーン』では「決めなきゃならないところを絶妙に決める腕。これから20年は彼の時代だ」とベタ誉め。実際2001年にオスカーを獲ったのだから、目の付け所はまんざらでもないぞ、10代のオレ(当時から評判の高かった監督なので威張れないけれど)。
決めなきゃならないところを決める腕は、本作でも生きている。
オープニングでは、スティーブン&ブライアンの父の大きさや、兄弟のその後の人生の転機となったであろう事件を、過剰な説明抜きに描く。火災現場で「応援が必要だ!」と叫びながら動くスティーブンをカメラが追い、その画面の隅できっちりと無線連絡をする隊員を映す。スティーブンの息子がブライアンと手をつないでいるのを見て「この子もきっと消防士になるのだろうな」と思わせる……。1カット/1シーンに入れ込まなければならない要素を“わきまえている”のだ。
炎の凄まじさを期待して観る人が多いはずだが、その火災と消火のシーンにことさら力を入れているのも“わきまえている”証拠。しかも、複数の火災をそれぞれ異なる規模・様子で描き分ける(もちろんクライマックスがもっとも迫力を持つような配分で)。
意思を持っているかのような火の動きなどILMの技術も見事だが、スタントの仕事も評価すべきだろう。『リベラ・メ』の項で述べたように、スタントマンを使うからこそできるダイナミックな演出もあるはずで、そのあたりもまた“わきまえている”映画といえる。ポール・ニューマンが『タワーリング・インフェルノ』(ジョン・ギラーミン&アーウィン・アレン監督)について語った「こういう映画では、俺たち(役者)は早めに引っ込むべきなんだ」という言葉の意味や、アカデミー賞スタントマン賞の必要性を肌で感じることのできる作品である。
音楽もいい。キャッチーで、バラエティ番組のテーマ曲にはもったいない重厚さも持つ。
演技陣では、リムゲイル調査官役のデ・ニーロ、服役中の爆破犯バーテルを演じたドナルド・サザーランド、スティーブンを諌める先輩隊員アドコックス役のスコット・グレンといったベテラン勢がストーリーをキリっと引き締めた。が、おかげで本来主軸となるはずの兄弟愛ドラマが薄まり、「爆破事件の犯人は誰か?」という謎解きにウェイトがかかりすぎて、どっちつかずの仕上がりになったことは否めない。
そうしたバランスの悪さがキズになってはいるものの、面白い映画であることは間違いない。アクション性の高いエンターテインメント作品でありながら消防士へのリスペクトも感じさせ、主人公が消防士であることの意味も十分にあり、危険の中でも互いに助け合う「消防士の映画」になっていたことを喜びたい。
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