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2005/10/22

ボーン・スプレマシー

監督:ポール・グリーングラス
出演:マット・デイモン/フランカ・ポテンテ/ジョーン・アレン/ブライアン・コックス/カール・アーバン/ジュリア・スタイルズ

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸3/技4

【記憶なきエージェントが策謀に巻き込まれる】
 封印された極秘計画“トレッドストーン”によって養成された元CIAの特殊工作員ジェイソン・ボーン。失った記憶が不鮮明な夢となって蘇ることに悩まされながらも、恋人マリーとインドで隠遁生活を送っていた彼は、何者かに命を狙われる。いっぽうベルリンでは公金横領事件の捜査官と情報提供者が殺害される。現場に残っていたのは、ボーンの指紋。諜報部のパメラは「トレッドストーン」の責任者アボットとともにボーンを追う。
(2004年 アメリカ)

【スピードと緊迫感で、ダイナミックに進む】
 なんといってもスピードが持ち味の映画シリーズ・第3弾。
 この作品も『バイオハザードII アポカリプス』(アレクサンダー・ウィット監督)同様、大胆な撮影・編集が特徴となっている。
 たとえば、本来なら「ポケットから小銭を取り出す→枚数を数える→飲み物を買う→栓を開ける→飲む」といった順・カットで描くところを、「小銭を数える→飲む」といったつなぎ(というか、ポケットから小銭を取り出してから飲むまでを1カットで撮影し、間をバッサリ切る)にする。
 正直『地下鉄のザジ』(ルイ・マル監督)あたりのジャンプカットは気忙しくて好きではないけれど、本作では「なんだかわかんねーけど、一刻を争うようなことが、いま起こっている」という雰囲気が、よく出ている。
 このほか1カットを別アングルから捉え直した絵が入ったり、全体に短めのカットで構成され、格闘シーンやカーチェイスは見飽きない程度のタイミングと尺で上手くまとめられるなど、とにかく、めくるめく展開とスピード感・緊迫感でグイグイ引っ張っていくことに主眼を置いた演出だ。

 また、冗漫さを排するため人物紹介や状況説明は最低限に抑えてあるのだが、と同時に余計な“遊び”も入れず、たとえストーリーを完全に把握できなくとも“観るべきポイント”だけはわかるよう展開が整理されている。
 つまり、「とりあえずパメラはボーンを容疑者と考えて追っている。が、彼女はどうやらボーンにとっての『敵』ではなく、真実に近づきたいと思って行動しているようだ」「ボーンは汚名をすすぐとともに事実をつかもうと各地を飛び回っている」「事件の陰には殺し屋のキリルがいて、その裏にはさらにロシアの組織が存在している」……といったことが、ぎゅんぎゅん飛ばすストーリーであるにも関わらず理解できるようになっているのだ。

 撮影は前作『ボーン・アイデンティティー』(ダグ・リーマン監督)に引き続いてオリヴァー・ウッド。『フェイス/オフ』(ジョン・ウー監督)や『ダイ・ハード2』(レニー・ハーリン監督)も担当した人物らしい。
 脚本も前作に続いてトニー・ギルロイで、こちらは『ディアボロス/悪魔の扉』(テイラー・ハックフォード監督)を手がけている。さらに『L.A.コンフィデンシャル』(カーティス・ハンソン監督)や『ミスティック・リバー』(クリント・イーストウッド監督)のシナリオライターであるブライアン・ヘルゲランドも参加。
 こうした、サスペンスものに馴れたスタッフを起用しているのも奏功したのだろう。

 スピード感・緊迫感を生み出す元として、登場人物たちの徹底したプロフェッショナリズム(の描写)があることも見逃せない。
 ロシアの悪党とキリルとの密談は「ボーンは生きていたぞ」と、ごく短く交わされるだけだし、ボーンやパメラ、さらには情報提供者を監視する役目の末端の捜査員ですら、必要最低限の会話だけで物語を進める。パメラたちが空港に降り立つと、そこにはちゃんと(急なことだったはずなのに)迎えのクルマが待っている。ドイツやロシアの警察も、素早く現場へと駆けつける。ボーンを仕留め損ねるキリルとボーンを拘束しかける警官たちを除いては(そりゃあ簡単に仕留めちゃったら、お話が終わっちゃうもんね)、誰もが滞りなく任務を遂行している、というイメージだ。
 主演マット・デイモンも、ジミー大西顔に似合わず鍛え抜かれた工作員の立ち居振る舞いを切れ良く表現している。パメラ役ジョーン・アレンも、相手の行動に理解を示し、真実を知りたいと願いながらも追跡の手を休めないという役柄を(このジャンルにはトミー・リー・ジョーンズのジェラード捜査官という巨大な存在がいるが)、抑制を効かせて好演していた。

 さすがにこの手の映画を観慣れていない人にとっては、あまりに目まぐるしくて混乱する可能性はある。また、記憶を失くし、愛する人まで奪われたボーンの苦悩や哀しさといった部分は不足しているようにも思える。
 だが前作を観ていなくても楽しめる仕上がりであり、「説明抜きのスピードで1本をまとめ切る」ことの面白さ・難しさを感じさせてくれる作品である。

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コメント

はじめてコメントさせていただきます。
hirxと申します。

「ボーン・スプレマシー」面白いですね.
ジェイソン・ボーンの記憶の謎解きが、薄っぺらではないアクションシーンやテンポのよい展開と相まって観ていて飽きませんでした。
続編が楽しみですね

私のサイトでも映画の感想等を載せているので良かったら見て下さい。ブログもやっています。

投稿: hirx | 2006/04/01 12:41

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» ボーン・スプレマシー。 [耳の中には星の砂の忘れ物]
Who?was I ? 『ボーン・アイデンティティ』の続編、ポール・グリーングラス監督作品『ボーン・スプレマシー』。“supremacy”ていう意味がわからんくて、辞書で調べてみた。すると、「最高、最高位、主権、優位、絶対的権力、支配権」て書いてありました。へぇ~。勉強... [続きを読む]

受信: 2005/10/25 16:32

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