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2005/10/24

TUBE チューブ

監督:ペク・ウナク
出演:キム・ソックン/パク・サンミン/ペ・ドゥナ/ソン・ビョンホ/チョン・ジュン/イム・ヒョンシク/クォン・オジュン

30点満点中17点=監4/話3/出4/芸3/技3

【地下鉄で繰り広げられる激闘は、復讐vs復讐】
 空港で銃撃戦が勃発、要人が殺害され、極秘データが持ち去られる。犯人グループの首領ギテクの次なる狙いは地下鉄ジャック。猛スピードで走る車内に爆薬を仕掛け、前首相を呼び出す。自分たち諜報員を切り捨て、証拠隠滅のため家族まで殺した前首相に対する復讐を企てているのだった。かつてギテクに恋人の命を奪われたチャン刑事は、単身、地下鉄へと飛び乗る。人質の中には、チャンに思いを寄せる女スリ・インギョンの姿があった。
(2003年 韓国)

【無理やりな展開を怒涛のスピードで見せ切る】
 とにかくスピードなのだ・第4弾。
 明らかに『スピード』(ヤン・デ・ボン監督)を意識した作り。サウンドトラックまでソックリだ。技術が未熟でカネを惜しむとチープなニセモノにしかならないが、幸いにも本作はマズマズの仕上がりとなっている。
 圧倒的なスピード感は、本家『スピード』をはじめとするハリウッド大作と比べても引けをとらない。ただしこちらは「何がなんだかわかんないけれど速い」的な作りではなく、しっかり見せつつ速さも印象づける。
 たとえば、チャンとスリが線路に落ちる→電車が来る→すんでのところで避ける→反対車線にも電車が来る、といったピンチの連続を、それとわかるようなアングルで映し、絶妙なタイミングでつなぎ、またホームにいる客が顔を覆うカットなども適確に挟んで、観ている者に「わっ、危ない!」と思わせる。抜群の編集センスだ。

 人物の配しかたも上手い。あくまでチャンvsギテクの対決図式+チャンに思いを寄せるインギョンの捨て身の活躍を中心に据えつつ、そしてこの中心部分をスピーディに描きつつ、地下鉄管制室の室長、チャンの上司、調子のいいスリ、チャンを助ける若者といった周辺キャラクターを、いい具合にストーリーの“息つぎ”に当てはめている。乗客の女の子も、わずか2~3カットの登場なのに印象に残る使いかた。この手の映画に不可欠な「余計なことをしちゃうヤツ」もちゃんといる。
 ひたすらギテクを追うチャンのキム・ソックン、冷酷なギテク役のパク・サンミンもベスト・キャスティングだろう。
 ただ、インギョン=ペ・ドゥナについては、もう少ししっかりと「振り向いてもらえない哀しさ」を描いてもらいたかったところ。スリという設定ももっと生かせたはずだし、手先の器用さを示す手品は1カットで描写すべきだったろう。
 せっかく“女優”を感じさせる素材であり、菅野美穂+笠木忍のルックスも、モロに好みだし(試しにYahoo!で「ペ・ドゥナ+笠木」で検索したら、案の定引っ掛かってきたのには笑った)、どうしてもその扱いには質の高さを求めてしまう。

 ストーリー的には、無理を感じるところが山ほどある。いくらなんでも走っている地下鉄に飛び乗るのはムチャだろう、とか、上り電車と下り電車が同じ軌道に入り込むなんてのもあり得ないだろう、とか、SWATの弾が犯人たちに当たらないのはなぜ? とか。
 こうした「危機的状況の作りかた・描きかた」については、リアリティは不足している。というより、力ずくで危機的状況を作り出している感じ。この部分がクリアされていればさらに評価を上げたいが、少なくとも「AがあるからBが起こった」という最低限の説得力を持たせる配慮はしてある(つまり、脈絡なく新しい展開にはならない)し、ピンチ→回避→またピンチ→解決→またまた新たな危機……と怒涛のスピードを実現しているのだから、細かな部分には目をつぶってあげてもいいかな、と思う。

 この手の映画の常として、後に残るものはほとんどないのだけれど、とりあえず2時間、ビュンビュンと楽しませてくれる作品ではあるだろう。

 それと、劇場で観ていないので理由はわからないのだが、DVDの画質はかなり悪い。画面の中の明/暗のコントラストが強すぎて、そのどちらにも露出があっていない映像で、クリアリティは低い。フィルムを20年間放って置いたというか、スクリーンに映したものをビデオ撮影したような粗い質感だ。
 マスターのフィルムからしてそうなのか、DVD化の際の処理に原因があるのか、いずれにせよ大きく損をしているディスクだ。

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