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2005/11/16

パーフェクト ストーム

監督:ウォルフガング・ペーターゼン
出演:ジョージ・クルーニー/マーク・ウォールバーグ/ダイアン・レイン/ジョン・C・ライリー/ウィリアム・フィクトナー/メアリー・エリザベス・マストラントニオ/ジョン・ホークス/アレン・ペイン/カレン・アレン/ボブ・ガントン/マイケル・アイアンサイド/ラスティ・シュワイマー

30点満点中17点=監4/話2/出4/芸3/技4

【究極の大嵐がカジキ漁船を襲う】
 東海岸の小さな町グロースターを母港とするカジキ漁の漁師たち。記録的な水揚げをマークした女船長リンダに対し、アンドレア・ゲイル号の船長ビリーは長いスランプに陥っていた。意を決したビリーは、帰港直後だというのに、若いボビー、バグジー、互いに憎みあうマーフとサリーらを率いて出航する。海図の東の果てフレミッシュ・キャップでようやく大漁に恵まれた一行だったが、その帰路には未曾有の巨大嵐が待ち構えていた。
(2000年 アメリカ)

【荒れ狂う海。でもちょっとキッチリしすぎ?】
 人間の歴史は冒険の歴史。けれど、勇敢と無謀とは似て非なるもの。冷静な判断がつきにくい状況であったとはいえ、生活がかかっているとはいえ、見たこともないほど荒れ狂う海へと突っ込んでいくのは、明らかに無謀だ。「命あってのモノダネ」ってのは、人生の真理だと思うぞ、船長。

 だって、いくら稼いだところでたいして生活は向上しないでしょう。前半1時間で乗組員それぞれの置かれている立場が丁寧に描かれるけれど、舞台は、港と「カラスのねぐら亭」だけ。つまり、それが世界のすべて。ゴミゴミして、いがみ合っている人もいて。そんな狭い輪の中で食いつなぐために命を投げ出すなんて馬鹿げている。
 ジョージ・クルーニーはジョージ・クルーニーだけれど、マーク・ウォールバーグは見事に変身しているし、ダイアン・レインもいい感じで年を取っているし、マーフの息子を演じた子役まで上手くって、それぞれが“この狭い世界の住人”を見事に表現している。中盤でも、不漁の苛立ち、歓喜、ちょっとした事件もあって、それぞれの近くでカメラも回って、乗組員たちがホンモノの漁師に思えてくる。
 だからなおさら「冒険は、もっと大きなもののためにしようよ」と感じられるのだ。

 そんなちっぽけな存在が立ち向かうには、この嵐はあまりに大きい。アニメーション(非実写)では水の表現がもっとも難しいと聴いたことがあるけれど、見事なCGによる驚異的な“うねり”と、セット撮影とを適時組み合わせて、画面上に超危機的状況が作り出される。音響もド迫力。ジェームズ・ホーナーの音楽も大作向きのスケールがある。まさに無謀のヴィジュアル化。大画面ならもっとヒリヒリした緊迫感を味わえたことだろう。

 ……いや、本当にそうだろうか?
 どうもこの作品、全体に「キッチリしすぎ」という印象が強い。序盤で乗組員の陸での様子をキッチリ描いた点もそうだが、絵の作りもキッチリ。クリスティーナがボビーに駆け寄って抱きつくカットに代表されるように、カメラをダイナミックに使いつつも、対象をフレームの中にキッチリとカッコよく収める。クライマックスでも、あれだけ荒れすさぶ嵐の中、船上の人物たちの表情や動きをキッチリと映し出し、伝える。
 最初は「しっかり撮っているなぁ」と感じたのだが、これだけの嵐、それなりに画面が揺れてこそ臨場感も出てくるはず。ブレてブレてよくわからないんだけれど、その中にチラっと描くべきモノゴトが映り込んでいる、みたいな。たとえば『ドーン・オブ・ザ・デッド』(ザック・スナイダー監督)のラストのように。
 撮影のジョン・シールが手がけた作品を調べてみると
  ハリー・ポッターと賢者の石(クリス・コロンバス監督)
  ザ・ペーパー(ロン・ハワード監督)
  ザ・ファーム/法律事務所(シドニー・ポラック監督)
 見事なまでにキッチリ系の作品ばかりだなぁ。

 そんなキッチリ感のおかげで、ちょっと離れた位置から冷静にアンドレア・ゲイル号と乗組員たちをながめる気分になって「命あってのモノダネでしょう、アンタたち」なんて冷静に考えさせるのかも知れない。
 そういう冷静さを奪うほど、もっともっと画面を荒らして観客を大嵐の中に叩き込んでくれれたなら、と思う。ただ、それだけでは「カジキ漁船が遭遇した大嵐、その嵐を見せたいがための作品」という位置から脱却することはできない。ならば、悪いのはキッチリした撮りかたではなくシナリオか。かかっているのは生活ではなくプライド、そういうことが伝わってくるようなシナリオであれば、身体の芯まで痺れただろう。

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