ノッティングヒルの恋人
監督:ロジャー・ミッシェル
出演:ジュリア・ロバーツ/ヒュー・グラント/リス・アイファンズ/ジナ・マッキー/ティム・マッキンリー/エマ・チャンバーズ/ヒュー・ボネヴィル/ジェームズ・ドレイファス/リチャード・マッケイブ
30点満点中15点=監3/話2/出3/芸3/技4
【大スターとの偶然の出会い、そして恋】
バツイチ、ルームメイトのスパイクは変人で、冴えない友人たちから付けられた昔のニックネームは“へなちょこ”。そんな平凡な男ウィリアム・タッカーがロンドン西のノッティングヒルで営む儲からない旅行専門書店に、ある日、ハリウッドの大スター、アナ・スコットが偶然訪れる。一時の巡り会いに思われたが、後日タッカーのもとにアナから電話が入り、再会したふたりは恋に落ちる。しかし、ふたりの関係はマスコミに知られ……。
(1999年 イギリス/アメリカ)
【現実味に乏しいし、おとぎ話としても薄い】
「なんかヒュー・グラントとトム・クルーズばっか観てるなぁ」
「しかも『ラブコメは苦手』といいながら」
「苦手というより、たいしたことないのにチヤホヤされている作品が多くて評判を鵜呑みにするとハズレを引く可能性が高そう、って感じ。まさにこの映画がそうだった」
「確かに内容のない映画でしたね」
「内容っていうか、まずヒロインのアナに魅力がない」
「あまり大スターっぽくありませんでした。SPも伴わず平気であちこちウロウロしていますし」
「ジュリア・ロバーツって嫌いじゃないし上手いとも思う。でも、この作品のアナに関しては、どうもなぁ……」
「スターであるからこそ起こるハプニングも、タッカーとの仲がスクープされることと、レストランで耳にする自分についての下世話な話くらいですし」
「彼女がスターだという実感に乏しい。存在に現実味がないんだよ。『この人は大スターですから』って、無理やり納得させられてる感じ」
「逆にタッカーの周辺はかなり細かく描かれています。平凡で冴えないコミュニティというか」
「ま、取ってつけたような変人のスパイクとか、トンじゃってる妹にリストラに料理ベタ。いくらかデフォルメされてはいるけれど、確かに細かい。ベラ役のジナ・マッキーはキレイだし。ただタッカー自身には、やっぱりこれっぽっちも魅力を感じないんだよなぁ」
「そのふたりが出会って恋に落ちるわけですが、展開はハッキリいって偶然と唐突の積み重ねですね」
「あらゆる点に必然性がなさすぎるんだよ。タッカーが本屋である意味、そこにアナが訪れる訳、彼女がタッカーのことをいきなり気に入る理由……。何も描かれていないもんな。たまたまスターと出会って、意外と尻軽だったので一発ヤっちゃって、そのままくっつく、みたいな映画だよ」
「ヒドイいいかたですねぇ」
「じゃあ、テレビやスクリーンでしか見たことのない実感のない存在だけれど、スターと偶然出会って恋に落ちてHしたいなっていう、男なら誰もが抱える妄想を映画にした、そういう作品」
「ますますヒドイいいかたですが、その通りなんですよねぇ」
「スターと付き合えるのって、いまやIT企業の社長くらいだもんな。一般人がオイシイ思いをしようとすれば、なんの脈絡も説得力もなく妄想が現実になる奇跡に期待するしかない。まぁ確かに、一般人から見たスターって現実味に乏しい存在だし、運命的な出会いって偶然訪れるものだし、そういう意味ではリアルかも。それにしても浅すぎるんだけど」
「なんというか、身分違いの恋につきものの“切なさ”がないんですよ」
「そうそう。タッカーも一応は悶々とするんだけれどさ」
「ただ悶々としているだけなんですよ。そもそもアナがスターっぽくないせいで、『ああ、彼女と僕は住む世界が違うんだ』っていう感じがまったく伝わってこないんです」
「そんなわけで、現実味にも乏しいし、妄想を映像化したおとぎ話としても浅い。まさに『たいしたことないのにチヤホヤされている』映画だと感じた」
「ホメるところはありませんか?」
「まぁソコソコ笑えるしテンポも悪くないので最後まで観られる。通りを歩いているシーンの季節の一気の移り変わりも面白い。それくらいかな」
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