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2005/12/24

ブルース・オールマイティ

監督:トム・シャドヤック
出演:ジム・キャリー/モーガン・フリーマン/ジェニファー・アニストン/フィリップ・ベイカー・ホール/キャサリン・ベル/リサ・アン・ウォルター/スティーヴン・カレル/トニー・ベネット

30点満点中18点=監3/話4/出4/芸3/技4

【神様になった男にも、どうにもできないことがある】
 ニュース番組のアンカーマンを夢見るTVリポーターのブルース。だが、いけ好かないエヴァンに先を越され、おまけに会社はクビ、クルマはクラッシュ。己の不運を呪って天に向かって毒づいたら、それを聞いていたのは、ほかならぬ神様だった。「不満ならば、自分でやれ」という神から全知全能を授かったブルースは、思いのままに特ダネを操り、ライバルを蹴落とす。しかし恋人のグレースの心だけは、彼から離れていくのだった。
(2003年 アメリカ)

【軽い笑いの中に埋め込んだ真理。思わぬ拾い物】
 この世で最も尊い行為は、祈り。それは確か成田美名子の作品で読んだセリフだったと思う。同感できる部分もあるが、腑に落ちないところもある。もっと能動的になるべきではないのか? 祈りだけですべてが許され、救われるものなのか?
 そんな疑問を解消するためのヒントが、まさか、軽い気持ちで見たコメディの中に転がっているとは。

 コメディである。しかも、かなりベタ。前半、もうしつこいほどに神を冒涜するような言葉が撒き散らされ、それが「だったらお前がやってみろ」へと続く展開は、強引というか、この設定のために無理やり用意された導入部という印象を与える。
 ただし、その強引さを強引に感じさせない“きっちり”感はある。室内でオシッコをするイヌ、ライバルは嫌なヤツ、渋滞に巻き込まれて仕事も上手く行かない、そうしたビフォア・ゴッドの出来事を、アフター・ゴッドできっちりと、神としての力で解決していく。「アレはどうなったの?」と放っておかれるエピソードが、まったくないのだ。なにげなく交わされた献血に関する会話も伏線として機能するなど、すみずみまで“きっちり”と組み立てられたお話だと感じさせる。

 きっちりしているから、無駄がないし、そのぶんテンポもいい。
 オンボロのフェアレディZがスーパーなスポーツカーに変わるなど、アップの絵から引くと周囲の状況が違っているというパターン。カップの中のコーヒーがモーゼの十戒よろしくふたつに割れたり、シュガー・ポットや月が引き寄せられたりなど、サラリとしてイヤミがないCG。そうした映像的な面白さも、コロコロと進む軽快さを生んでいる。

 ジム・キャリーの「一般人が3~7だとしたら、こいつのテンションは常に10」というスロットル全開のノリは正直苦手なのだが、本作ではその過剰なアクションが比較的上手く機能している。ともすれば、フィクションやファンタジーを超えて“丸っきりのウソっぱち”になりかねない設定の強引さを、映画という枠内につなぎ止める働きをしているのだ。クセのある素材をちゃんとした料理に仕上げるための、クセのあるソース、といったところか。
 その濃厚さが、モーガン・フリーマンの茶目っ気のある神様や、『フレンズ』よりもやや抑え目のジェニファー・アニストンといいバランスを保つ。

 つまりは、構成・展開も演出もキャスティングもきっちりしていて、安心して観られる軽いコメディなのだ。

 ところがクライマックスで、人と人との関係における重い真理をズンと突き立ててくる。それが、祈りだ。
 神となったブルースの耳には大勢の人の身勝手な祈りが届くわけだが、彼はその中に埋もれている「他人のための祈り」に気づくことになる。それまでひたすらブルースの利己的な行動を描いていただけに、余計にその利他的な祈りが胸に染み入ってくる。
 そう、祈りというのは“誰か”のためにするものなのだ。本来はどうしようもなく利己的な人間という生き物が、誰かのために、何かをしたいと決意する、それこそが祈りであり、だからこそ尊いのだ。
 てっきり「人の心だけは神様でも動かせない。自分自身がその相手に働きかけなければならない」がテーマだと考えて観ていたのだが(そうしたメッセージも詰め込まれているけれど)、祈りという行為の本質に思わぬところで気づかされて、不覚にも涙ぐんでしまった。

 まずは祈ることから始まる愛。祈りで満たされた愛。愛されるよりも愛することの幸せ。そんな、口にするのはちょっと恥ずかしいけれど、確かに人生の真理といえそうなものが、笑いの中にそっと置かれている作品である。

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