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2006/01/10

Ray/レイ

監督:テイラー・ハックフォード
出演:ジェイミー・フォックス/ケリー・ワシントン/クリフトン・パウエル/ハリー・レニックス/テレンス・ダション・ハワード/ラレンズ・テイト/リチャード・シフ/アーンジャニュー・エリス/ボキーム・ウッドバイン/シャロン・ウォーレン/カーティス・アームストロング/レジーナ・キング

30点満点中17点=監3/話2/出4/芸4/技4

【盲目のミュージシャン、その半生】
 7歳で失明した盲目のミュージシャン、レイ・チャールズの半生を描いた映画。幼い頃の“事故”がトラウマとなり幻覚に苦しむレイは、演奏の腕と音楽センスが見込まれ、精力的な演奏活動も実って次第に人気を集めるようになる。最愛の女性デラ・ビーとの結婚を果たし、ヒットチャートの上位常連にもなった。だが若い頃に手を出した麻薬の悦楽から抜け出すことはできず、また、コーラスの女性たちとの関係も断ち切れずにいた……。
(2004年 アメリカ)

【まとまりはいいが、やっぱり伝記映画】
 人生の全体にせよ部分にせよ、はたまた何かの物事にせよ、“成功”の陰にはなんらかの理由があるはずだ。日々の精進、天性、神の思し召し、あるいは偶然。
 この映画が成功した理由はといえば「上手くまとめたなぁ」に尽きる。

 映画内の「現在」に、主にレイの回想としての「過去」を織り交ぜて、レイが母親アレサから受け継いだ価値観をひとつずつ解き明かしていく構成がまず面白い。単純に一定の時間軸で話を進めるのに比べて、抑揚のある展開を実現している。
 聴き覚えのある曲が軽快にストーリーへと乗っかってゆくのも楽しい。しかもチャプター2つ~3つ置きに音楽的・映像的見せ場を配置して、ダレることがない。

 個々のシーンの表現も、ターニングポイント(女性との出会いと別れ)では光と影のコントラストがアクセントとなり、回想シーンでは色味を強調したハイキーでデジタルっぽい絵が神秘性を生んでいる。全編に渡ってかなり細かくカットを割っていて、気を抜かせない作りだ。
 特に失明したレイが「耳で聴く」ことを意識し始めるシーンでは、さまざまな“音”が散らしてあるとともに画面を凝視させる作り。彼が倒れやすいところにマットが敷いてあったり、懸命に家の中を歩くレイを心配そうに見守るアレサの表情を捉えたりして、さりげなく母の優しさも表現。言葉・セリフで説明しなくともいろいろなことを掴み取れる、本作の中の名場面の1つだ。

 役者も上質
 オスカーを受賞したジェイミー・フォックスは、思いのほか「モノマネ」になっていないと感じた。きっちりと役柄を消化した成果だろう、感情の起伏をニュートラルよりもややマイナス側にキープしつつ、けれど演奏シーンでは体の芯から沸き上がってくる“楽しさ”を表現し、少しずつの心情変化もしっかりと演じて見せる。
 周辺キャラクターも全体に腰の座った演技で、ただしでしゃばらず、主役であるレイの人生を彩る存在として配置されている。

 ストーリー的にも、少しずつ売れていく様子やレイの身に起こった出来事を過不足なく盛り込み(ドラッグにおぼれた人物を称えすぎにも思えるが)、テンポもよくて、「和田アキ子の師匠」くらいにしかレイ・チャールズに興味のない人も退屈させない。トータルの流れがいい作品に仕上がり、だからこそ成功したと思わせる。

 ただ、この物語の主役であるレイの“成功”については不満が残る。これだけの楽曲をヒットチャート上位に送り込み、豪邸を構え、自分のスタジオまで持てるようになったのだから、彼が成功者であることは間違いない。けれど、本作からは彼の“成功”の原因が伝わってこないのだ。
 まず、彼の天才性のルーツが不明。音楽作りの根っこには、貧しかった幼少期、その頃に負ったトラウマ、母からの教え、聴くことを研ぎ澄ませた経験などがあることはわかるのだが、それらが実際の曲にどう結びついたのか、心情が音楽表現としてどう昇華したのか、そんな鮮やかさを感じられる場面がない(各曲の詞の内容や曲の成り立ちをしっかり把握できれば、印象もまた違うのだろうが)。
 もっとも感動的な場面(になるはずだった)のは、かつてステージに立つことを拒否されたジョージアにおける復権のシーンだが、それ以前にレイが人種差別に悩まされる描写がほとんどないため、どうもシラケ気味。
 妻のデラ・ビーが「あなたは女でも家族でもなく音楽が一番」なんて急にいったところで、それに該当する描写がないのだから、やっぱりシラケる。

 また、実話なので仕方ないとはいえ、登場人物が多すぎ(特にマネージャー的な役割の人)て、誰がレイに対してどの程度の影響を与えたのかが曖昧だ。「信頼できるのはジェフとファットヘッドだけ」など、人間関係の説明をセリフですませてしまっているところもあったりする。
 あくまで“かいつまんだ”伝記映画、「へぇ、この人ってそうだっのか」レベルにとどまり、1本のストーリー映画としては甘さの残るものになっていることは否めない。
 カタチはいいけれど、中身にはやや不満。そんな作品だ。

 それにしても、使い込みとかドラッグとか、「それは映画の中で言って欲しくなかったなぁ」と反対する人だっていただろうに、こうして完成させたことには驚かされる。そのあたりがレイ・チャールズの人徳なのだろうか。

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受信: 2006/02/13 22:22

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