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2006/01/22

いぬのえいが

30点満点中16点=監3/話3/出4/芸3/技3 ※平均

【犬と人とが織り成す出会いと別れのストーリー】
 公園で犬を散歩させる人たちの本音…「うちの子No,1」/ドッグフードのCMはスポンサーらの要望で思わぬ方向へ…「CMよ、どこへ行く」/CMプランナーの山田とポチとのほろ苦い思い出…「ポチは待っていた」/下心丸出しのご主人に連れられて散歩するコロは…「恋するコロ」/犬語解析装置誕生秘話…「犬語」/仲睦まじく遊ぶ少年と飼い犬はやがて…「A Dog's Life」/愛犬との別れ…「ねぇ、マリモ」
(2004年 日本)

【いぬのえいがは当たり前の映画】
 子どもと動物には勝てない。たとえば寝姿を捉えた写真1枚、その可愛さだけで世界を征服してしまう。
 だからこそ動物映画にはプラスアルファが必要なはず。可愛さだけに甘えず素材を料理して、動物をメインに据えた意味=テーマ性を追求し、ストーリー映画としての完成度を高めなければならないと思う。

 本作でいえば、各話の間に挿入されるクレイアニメ(浜島達也)が犬の可愛さをクローズアップした部分。このつなぎは上々だろう。では肝心の各エピソードはというと……。
 どの話も、犬と人との関係を極めてパーソナルなところへ落とし込んでいく。しかも、犬が人と人とを結びつけたり、犬によって癒されたり、別れの悲しみがあったりと、かなりベタ。そしてクドイ。
 それはそれでいい。われわれの日常で普通に見られる、あるいは想像の範囲内にあるエピソードを並べることで「人類の歴史上もっとも古くから愛玩動物として親しまれている」といわれる、犬という存在の身近さを再確認することができるわけだし。

 だが、テーマが重複しているエピソードもある。人あるいは犬の“内側”から語るような内容ばかりで、見た目のバリエーションも少なく、オムニバスとしての魅力にも欠ける。ストーリー的にも演出的にも「うんうん、そうだよね」ばかりで「!」が足りない、当たり前の映画にとどまっているように感じるのだ。

■「うちの子No,1」
監督:祢津哲久
出演:佐野史郎/渡辺えり子/吉川ひなの
 まさしく「うんうん、そうだよね」的な話。ミュージカル仕立てで軽快に見せるが、どうも華やかさが少ない。
 いや、衣装や花壇、多彩な犬種などカラフルな画面だし、冒頭の佐野史郎&渡辺えり子のアップは面白いんだけれど、いざ飼い主たちが本音を吐き出す段になると、空の色のヌケが良くないし、画面はチマチマしているし、なんとなぁく「戦隊ヒーローもののエンディング」みたいな雰囲気
 もっと毒を撒き散らして、暴れるような絵柄にして欲しかった。まぁオープニング・エピソードとしては、こんなところか。16点。

■「CMよ、どこへ行く」
監督:黒田秀樹
出演:中村獅童/伊藤美咲/高橋克実/北村総一朗/戸田恵子
 どうしてこうCM界の裏話コントを入れたがるのかね。確かに笑えるけれど、それだけ。内容的にもベタ。『いぬのえいが』であることを考えれば、人様の都合で犬の存在がないがしろにされる、といった雰囲気を前面に出すべきではなかったか。
 時間を置いて撮られたであろうカットをつなぐ“間”の微妙な悪さも、個人的・生理的に気になったところ。15点。

■「ポチは待っていた」
監督:犬童一心
出演:中村獅童/小西真奈美/天海祐希/川平慈英/木村多江/清水美那/松岡璃奈子
 映画の中心を成すエピソードで、至極真っ当というか、落ち着いた雰囲気で作られている。ヘタな仕事ならスローモーション多用や大仰なBGMで盛り上げたりするところを、淡々と、犬や人に寄り過ぎることなく、やや醒めた視線で描いているのもいい。パン屋さんの壁にかけられた写真、空き地に止められたブルドーザーなど、画面の隅々にまで気を配ってもいる。
 が、ちょっとクドいか。たとえば上記「パン屋さんの壁の写真」は、わざわざ抜く必要はなかったはず。ミュージカル仕立ても「うちの子No,1」とダブる。病院でのナレーションもウザイし、季節変化もあざとい。
 ただでさえ先の読める展開なのだし、せっかく淡々とした流れが味となっているのだから、とことんサラリで押し通したほうが、逆に余韻を楽しめたのではないだろうか。
 出色はポチの演技。お見事。16点。

■「恋するコロ」
監督:佐藤信介
出演:佐藤隆太/乙葉/荒川良々(声)
 これまた先の読める話で、大きな展開のない割に1シーンずつがちょっとクドめ。けれどフツー。オチもバレバレ。
 調子のいい男というハマリ役(っていうか、それしかできないか)を得た佐藤隆太を生かしてもっと笑いを入れられただろうし、乙葉のオットリ嬢ちゃんも見たまんまで工夫がない。あと何か1つ、ドカンと来る要素があればなぁ。15点。

■「犬語」
監督:永井聡
出演:田中要次
 ひょっとすると歴史的大発明にもなりうる「犬語の解析」という研究は、実は個人的興味からスタートした、という設定は、映画のテーマをパーソナルなところでまとめようとした本作の主旨に、もっとも沿っているものではないだろうか。
 研究者・丸山役の田中要次が見せるおマヌケっぷり、ちょっと卑怯な外国人研究者の扱い、インタビュアーや通訳のトボけた味わい、そしてポンポンと弾む流れの良さ+各カットの絵としての面白さで一気に見せてしまう。
 オチは読めるけれど、イマ風のノリがあって楽しい仕上がり。17点。

■「A Dog's Life」
監督:黒田昌郎
 人と犬との関係を、パーソナルなところで描くだけにとどまらず“社会”へと持っていこうとして、やっぱやめとくか、と踏みとどまってしまった。
 このポップな絵柄で「犬を可愛がる人」という図に潜む業のようなものを描き切れば、ほのぼのした本作の中で異彩を放つ、はらわたを抉るような作品になっただろうに。14点。

■「ねぇ、マリモ」
監督:真田敦
出演:宮崎あおい/利重剛
 免罪符。犬に限らず動物を飼っている人、飼ったことのある人なら、ほぼ間違いなく泣けるはず。
 画面1つ1つも美しく、たとえばクルマの中で犬を抱きかかえる少女、学校の下駄箱スペースから駆け出す宮崎あおい、頭から水を浴びるお父さんの背中……といったカットの収まりの良さには、理屈を通り越した絵作りのセンスを感じる
 ただ、やっぱりクドい。文字かナレーションか、どちらかのみでよかったのではないか。17点。

 飼うという字に“食”が含まれているのは「動物に食べものを与えて育てる」からというだけでなく、「食べるために育てる」という意味も持つからだという。そんな「!」が盛り込まれていれば、もう少し心に迫るものになったかも知れない。
 ペット不可のマンション、犬に噛まれる事故、なつかない、しつけがなっていない、ブリーディング、犬アレルギー……。犬をメインとした話なんかいくらだって思いつく。その中で、わざわざこれらのエピソードを映像化した意味を明確にするには「!」が必要なはずなのだ。

 何本寄せ集めても名作Flash『クドリャフカ』(作者・凡)が持つ「!」に敵わないというのは、商業映画としてどうなのよ、と思う次第。

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