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2006/01/04

テッセラクト

監督:オキサイド・パン
出演:ジョナサン・リス=マイヤーズ/サスキア・リーヴス/アレクサンダー・レンデル/レナ・クリステンセン

30点満点中15点=監3/話2/出3/芸3/技4

【麻薬と男と女と少年をめぐる、あるホテルでの出来事】
 303号室のイギリス人青年ショーンは、大きな取引を控え、だが相手が現れずに苛立っている。マフィアのボス襲撃に失敗した殺し屋の女リタは、重傷を負って203号室へと逃げ込む。205号室にやって来たのは、幼い息子を失くした心理学者のローザ。ホテルで下働きをする13歳のウィットは、客の荷物を盗んで売りさばくことを生業としていた。バンコクの、薄汚れた小さなホテル。夕刻。それぞれの人生が交じり合っていく。
(2003年 イギリス/タイ/日本)

【面白みのない話を、なんとかイジってはみたものの】
 日本人って年間に何本くらい映画を観るのだろう。劇場へ足を運ぶのが正月と夏休みとデートで計3本、そこにレンタルビデオやDVDやTV放送をあわせて、せいぜい10本。ひとり暮らしのOLや学生で映画くらいしか楽しみがないとしても、その倍の20本といったところか。
 趣味の欄に「映画鑑賞」と書くくらいの人=年間30本以上なら、こういう映画が1本くらい含まれているのも悪くない。でも10本なら、その限られた枠を埋めるには値しないデキだろう。

 まず、お話に中身がない
 ショーンはイライラしているだけ。ローザが抱く失意や少年へのコンプレックスも掘り下げられない。ウィットは、ただの子ども。リタの登場シーンはわずかだし、周辺キャラクターにも深みはない。
 結局のところ「麻薬取引のゴタゴタに、ホテルの宿泊客やボーイの男の子が巻き込まれて、死にそうなヤツが死ぬ」というだけの話である。

 その単純なストーリーを、スタイリッシュな映像と凝った構成で見せるのが本作の趣旨だ。コマ落としやスローモーションや早送りがさかんに用いられ、色調は目まぐるしく変化し、時制も行ったり来たりする。
 それらは一応は、ミステリアスな雰囲気を生み出したり「ああなるほど、あの出来事はそういうことね」などとジックリ咀嚼させる効果をもたらしてはいる。
 が、ウォシャウスキー兄弟作品などですでに観たような手法の羅列にすぎないし、そもそも物語に“味”がないので「ふ~ん、それで?」といったところにしか行き着かない。
 結局のところ「たいしたことのない話を、シャープな絵でゴチャゴチャとイジくってなんとか面白みを出そうとしたけれど、単にゴチャゴチャしてただけになっちゃった」という作品。テッセラクト=四次元の展開図というタイトルがコケオドシにしか思えない仕上がりなのだ。

 とはいえ、それなりに切れもあるし、その割に意外と1カットずつに落ち着きがあり、ダークな雰囲気も悪くない。どうせ浅い話なのだから20分くらいに縮めて、ミステリー系オムニバス映画の1本としてどこかにぶち込めば、それなりに楽しめたかも知れない。
 現状では「まぁ年に30本以上観れば、こういうのが混じっていても仕方ないか」というレベル。どうしようもないほどツマラないわけではないし、まずまず“イマドキ”の空気も漂っている。映画として破綻しているわけでもない。だから、うん、観て損したというより「仕方ない」という表現がピッタリに思える作品だ。

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