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2006/02/23

マシニスト

監督:ブラッド・アンダーソン
出演:クリスチャン・ベイル/ジェニファー・ジェイソン・リー/アイタナ・サンチェス=ギヨン/ジョン・シャリアン/マイケル・アイアンサイド

30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4

【眠れない。なのに悪夢が襲いかかる】
 工員トレバーの悩みは、眠れないこと。その期間は1年にもおよび、「不眠で死んだ者はいない」とうそぶくものの、みるみるやせ衰えていく。だが彼にも、売春婦スティービーとのひととき、空港のカフェでウェイトレスとして働くマリアとの語らいという、ふたつの癒しがあった。やがてトレバーの周囲で発生する、不可解な出来事。同僚の事故、彼以外には見えない工員アイバン、見覚えのないメモ……。いったい何が起こっているのか?
(2004年 スペイン/アメリカ)

【思わせぶり、でもわかりやすい、けれど……】
 映画で描かれるものといえば、事件・出来事、人物・存在、心情など。どこに比重をかけるか、その配分を誤ると、薄っぺらな人間ドラマになったりクドすぎる歴史ものになったり、バランスを欠く原因となる。
 そんな配分とバランスなんか無視、出来事と人物と存在と心情とを、いったんゴッチャにしてから組み立て直したのが本作だ。

 冒頭から、問答無用というか、前置き抜きで、観客はトレバーのそばに立たされて、彼が見聞きする「?」を彼と同時に体験することになる。その後はとにかく、何が理由で何が起こっているのか、それぞれの出来事がどれほどの意味を持つのか、因果関係やモノゴトの重要度がまったく示されぬままストーリーが進む。
 あるクエスチョンが起こったかと思えば、その解決やヒントを待たずに次のクエスチョン。フラッシュバックされる意味不明の、でも意味ありげなカットは何なのよという構成。
 画面がまた、ひたすらオモワセブリック。色調が抑えられ、限りなくモノトーンに近い絵。そのぶん明暗のコントラストがクッキリ。まるで世界がグレイの空気に覆われているかのようだ。その中で、アイバンが乗るポンティアックの赤だけが映える。
 音楽は、ハッキリと『ウルトラQ』。それが「だからいったい何が起こっているのよ?」という気持ちをますます強くさせる。

 出てくる人物たちがまた、微妙にオモワセブリック。
 トレバーを演じるため30キロ近くも減量したというクリスチャン・ベイルは、そのあっぱれな痩せっぷりはもちろん、狂気を滲ませた瞳、常に半開きの口が、観る者を出来事にピタリと貼りつかせる。
 ふわふわとした現実味のあるジェニファー・ジェイソン・リーのスティービー、なんだか印象の薄いアイタナ・サンチェス=ギヨンが演じるマリア、その息子ニコラスの全白眼、ジョン・シャリアンによるどことなく安っぽい謎の男……。
 あちこちから危険信号が発せられているような感じ。

 ゴッチャにしてから組み立て直し、空気も人物も思わせぶりに統一したからといって、わかりにくいわけじゃない。1つ1つのカットはしっかりと、たとえばトレバーが視線を動かせば必ずその先のものを映すなど、これでもかというくらい真っ当に撮られている。
 最後まで見終えて「ああ、そういうことだったのね」というところへストンと収まる心地良さもある。
 そう「○○○で○○○を○○○○○○のに○○した男が行き着く先」を映像化したものとして、きれいにまとまる。

 そのいっぽうで、そろそろこういう“オチもの”に食傷気味の自分にも気づいてしまう、そんな作品である。

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