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2006/02/15

レザボアドッグス

監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ハーヴェイ・カイテル/ティム・ロス/マイケル・マドセン/スティーヴ・ブシェミ/クリストファー・ペン/ローレンス・ティアニー

30点満点中18点=監4/話4/出4/芸3/技3

【計画の破綻。この中に裏切り者がいる】
 宝石強奪のため、世話人ジョーが集めた6人のプロ。黒のスーツに身を包み、たがいに“色”で呼び合う6人の男たち。だがどこから計画が漏れたのか押し入った店で警官に囲まれ、銃撃戦となってしまう。腹を撃たれたミスター・オレンジを担いで集合場所の倉庫にたどりつくミスター・ホワイト。遅れてやってきたミスター・ピンクは「裏切り者がいる! ここも危ない」と疑念と不安を爆発させる。事態は、思わぬ方向へ転び始めるのだった。
(1991年 アメリカ)

【カッチリと作り込まれ、密度の濃さを感じる映画】
 で、英Empire誌が発表したインディペンデント映画ベスト50、その第1位が本作。限られた空間に緊張感を詰め込んだ(つまりは少ない予算の範囲内でカッチリと作り込んだ)映画のデキはもちろんのこと、タランティーノという奇才を世に出した存在意義、ベテラン俳優が脚本に惚れて製作を買って出たという経緯、商業的成功(したんだよね、たぶん)などがあいまって「代表的なインディーズ作品」として多くの支持を得たのだろう。

 そう、破綻なくカッチリと作られているな、というのが第一印象。
 強奪シーンの描写を省略、いきなり計画失敗を既成事実として話をスタートさせる。そのおかけでもたらされる密度。
 時制を飛ぶことで、少しずつ解きほぐされていく事件の全貌。
 キャラクター描写は必要最低限に抑えられていて、それぞれプロとしての甘さも感じさせる。が、セリフの端々から滲み出てくる価値観や苛立ちが、各人の肉付きとなって機能する。演技陣も、それぞれの役にピタリとハマっていて、このコンパクトな物語の中で思いっきり演技できることを楽しんでいるような雰囲気もある。

 彼らが逃げ込んだ倉庫内の張り詰めた空気を、不必要にかき乱すことのないよう制限されたBGM。
 スっと対象物から離れたり回り込んだり、あるいは手持ちカメラでグっと近づいたりすることで、漂う臨場感とおぞましさ。場面の大半が倉庫内であることからやや舞台劇っぽい匂いもするが、それもまた臨場感の増強につながっている。
 その整然とした中に、冒頭の意味のない会話を“味”として加えるのがタランティーノ流なのだろうとも思ったが、振り返ってみればこのシーンもまた大仕事に向かう直前のプロたちの緊張感や自己欺瞞を表現するという作用を担っている。

 もっともっとバイオレンスを強調してパワーで押しまくるものだと思っていたのだが、意外なほどに整然。構成、演出、演技、カメラワークなどの各要素がきっちりと形を成す。それで流れと空気感・密度感を大切にした「カッチリとした」作りになっているように感じられるのだ。
 かといってパワフルじゃないわけでもない。その密度感の高さゆえに、みぞおちのあたりを拳でグリグリやられるようなチカラも持つ。「じゃあ何をいいたかったのか」などと考えるのは野暮だろう。窮地に陥った男たちの焦りを存分に描き切って、ラストまで一気に見せるのはパワーがある証拠だ。

 ただ、この「猥雑ながらも整ったパワー」を存分に味わえるのは英語圏の人々、それもアメリカ人だけではないかという気もする。なにしろ、あらゆる言葉の前置詞として用いられ、5秒に1回は登場するほどの「Fuckin'」の嵐。健全な辞書には載っていないスラングの洪水。
 試しにWEBの翻訳サービスで「Fuckin' Police」を訳してみた。
  Yahoo!……くそいまいましい警察
  excite……すごい警察
  @nifty……警察との性交
 Yahoo!翻訳の圧勝。だが、逐一字幕にすると煩雑(実際、ほとんど訳されていない)。会話の生々しさを体感しようと思えば、ある程度のリスニング能力が必要となるんじゃなかろうか。

 ふと、浦沢直樹っぽいな、とも感じたりする。コンパクトにまとまって、そのぶん密度があって、男がいて暴力があって焦りがあり、収まるべきところにきっちり収まるキレのいいエンディングは、浦沢直樹の短編風。ハーヴェイ・カイテルやティム・ロスなんか、まんま浦沢直樹の作品に登場してもおかしくない顔立ちだし。
 だから何だといわれても答えようがないけれど。

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