用心棒
監督:黒澤明
出演:三船敏郎/東野英治郎/仲代達矢/山田五十鈴/河津清三郎/山茶花究/加東大介/太刀川寛/志村喬/司葉子/渡辺篤
30点満点中20点=監4/話5/出4/芸4/技3
【宿場町を分かつ騒乱、そこに風来坊一人】
とある宿場町にふらりとやってきたのは、桑畑三十郎と名乗る浪人。そこでは博打の元締め・清兵衛と、その跡目を狙う丑寅が、それぞれ大勢の無宿人たちを抱えて睨み合っていた。おかげで町は人が寄りつかずにさびれるばかり、繁盛するのは棺桶屋のみ。「お前も早く出て行け」という居酒屋の親父の言葉に耳を貸さず、三十郎はどちらにつくか思いあぐねているふりをしつつ両者の共倒れを画策する。そこへ丑寅の弟・卯之助が旅から戻り……。
(1961年 日本)
【三十郎に寄り添って、その企みに笑いながら付き合う】
「いや、だからね、このレベルの映画を語るのはおこがましいって」
「ひたすら面白い作品ですもんね。笑いっぱなし」
「うん、まさかコメディだとは思わなかった」
「登場人物たちが実にいいんですよね」
「清兵衛たちの内緒話を耳にして口を尖らせる三十郎、オツムの弱いことをキッチリと利用される亥之吉、用心棒の本間先生、頑固ジジイだけれどコロリと態度を変える親爺……。設定や細かな仕草で、いちいち笑わせる」
「笑いがない人も、卯之助とか丑寅の子分のデカイ奴とか、それぞれに狂気を抱えていて、キャラが立っている感じです」
「わらわらと人がいるんだけれど、ムダに出てるのはいないんだよ」
「音楽もコミカル。しかもポップ」
「宿場町の再現性も高いんじゃないか」
「ただ撮影は、昼を夜に仕立てているところとかブレとか、ちょっと気になりました」
「でも、望遠で狙ったり手前から奥までキリっとフォーカスを合わせたり動く人物をグイグイ追いかけたり、実にシャープでダイナミック」
「マルチカメラとキレのある編集のおかげでリズム感も生まれる、ということがよくわかる作りでもありましたね」
「それと、空間というか、臨場感の表現ね。観ている人が、常に三十郎の位置を意識・認識できるようなカメラワークなんだ。オープニングからラストまで、カメラはほとんど『三十郎がいる空間』から出ないだろ」
「離れるのは、清兵衛の後ろ盾である名主の家が焼かれるところと、丑寅のパトロンである徳右衛門の酒蔵が壊されるところくらいですか」
「映画を観ているというより、三十郎のやりかたに付き合わされて、やきもきさせられたり爽快感を感じたり、という雰囲気が作られるわけだ」
「三十郎の企みが亥之吉にバレるのも、居酒屋の中だけでスリルを高めていましたしね」
「ストーリー展開も、コミカルでスリリングで、わかりやすくていい」
「説明セリフは多かったでしょう? 二派がいがみ合っていることとか、徳右衛門の愛人の件とか」
「確かに。そのあたりが『観ればわかる』という作りなら格式の高さも出たんだろうけれど、ハードボイルド時代劇にコメディ色を付加させたこの作品では、むしろ潔さも感じた。ごちゃごちゃしたことはセリフで説明しちゃえばいい、見せるべきところは他にもあるんだから、って。そのあたり、ひょっとすると『スター・ウォーズ』なんかに影響を与えているのかもね」
「結局、今回もいろいろ語りましたね」
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