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2006/03/29

レーシング・ストライプス

監督:フレデリック・デュショー
出演:ヘイデン・パネッティーア/ブルース・グリーンウッド/ウェンディ・マリック/M・エメット・ウォルシュ
声の出演:フランキー・ムニッズ/マンディ・ムーア/ジョー・パントリアーノ/ジョシュア・ジャクソン/ウーピー・ゴールドバーグ/ダスティン・ホフマン/マイケル・クラーク・ダンカン

30点満点中16点=監3/話3/出3/芸3/技4

【ボクは競走馬になりたい! シマウマの夢は叶うのか】
 ケンタッキーの田舎町。サーカス団から置き去りにされたシマウマの子どもはストライプスと名づけられ、農場主ノーランとその娘チャニングによって育てられる。ストライプスの夢は、近くの競馬場で開かれるレースで走ること。だがサラブレッドのプライドたちにはバカにされ、自分が競走には出られないシマウマだと知って落胆する。それでも彼は、ポニーのタッカーやヤギのフラニー、白馬のサンディらに励まされて、夢の実現を目指す!
(2004年 アメリカ)

【安心して観られる“観なくてもいい”作品】
 競馬ファンにとって、競馬映画ほどつまらないものはない。シナリオライターがどれだけ頭をヒネっても、監督がどれほど工夫を凝らしてみても、あまりに完成されすぎたテンポイントの物語、熱狂に彩られたオグリキャップの生涯、宙を飛ぶディープインパクトの衝撃に勝るものはない。

 もちろんフィクションにはフィクションにしかできないことはあり、それがリアルな競馬にはない面白さにつながることもある。好例が(映画ではないけれど)荒唐無稽を極めつつもきっちりと涙と笑いのスポ根に昇華させてみせた『みどりのマキバオー』(作・つの丸)だろう。
 本作でも『ベイブ』(クリス・ヌーナン監督)でおなじみとなったアニマトロニクスの技術を駆使し、動物たちを擬人化して映画にしかできない表現と演出に挑んでいる。

 が、ストーリーは「どこかで観た」ようなフォーマット。無謀な夢を抱く若者、いじわるで気位の高いライバル、挫折、周囲の励まし、愛、トレーニング、そしてクライマックスと大団円。妻を競馬の事故でなくした元調教師の農場主とその娘という図式も、取ってつけた感が強い。
 いってしまえば、強引な夢物語。多彩な動物キャラクターたちも、もっと生かしようがあったはずだ。
 正直なところ、別に観なくてもいい作品。同じようなテーマでもっとデキのいい映画は他にいっぱいあるはずだ。だいたい、字幕版ではダスティン・ホフマンが声を担当しているタッカーに三宅裕司、ジョー・パントリアーノのペリカンに松嶋尚美という意味不明のキャスティングとなった日本語版の製作姿勢からして「そういうレベルの映画」と気づく。

 それでも憎めないのは、丁寧な作りゆえか。高慢な競馬場オーナーや競馬好き・ギャンブル好きの親父など物語を円滑に進めるために必要なキャラクターがきっちりと配されているし、この手の映画にはありがちな唐突すぎる展開には持ち込まず、夢→挫折→再生と段階を踏んで着実に歩を進める。
 白黒ツートンのストライプスが画面に映えるよう、ダートがメインのはずの米国で芝のレースを舞台とするなどカラフルさに心を配り、夜こっそりと開催されるブルームーン・レースの美しさ、動物たちの適確なアクションなど画面の見た目も楽しい。
 合成にも無理がなく、ストライプスや馬たちの疾走も(レース場面で騎手がまったく“追って”いないのは興を削ぐが)スピード感十分だ。

 なにより、定型フォーマットゆえの安心感がある。走る側も賭ける側も命を削るようなリアル競馬から一歩離れて、こういう、罪のない映画でいったんリフレッシュしてみるのも悪くない。

 ちなみにリアル競馬には、シマウマは出走できません。出走したとしても本作で戦われているようなレース(2000mくらいか。5分もレースシーンがあるのは演出上のご愛嬌)でサラブレッドに勝てることはないはず。
 競馬好き親父のウージーがストライプスの400m走破タイムを計測して「23秒だ」と感嘆することから考えると、ストライプスはクォーターホースによる超短距離戦ならなんとかなるダッシュ力の持ち主であり、それが中距離戦に挑んで最後の直線でスタミナ切れを起こし、それでも心を無にして頑張る、というのがクライマックスにおけるポイントといえそうだ。

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