N.Y.式ハッピー・セラピー
監督:ピーター・シーガル
出演:アダム・サンドラー/ジャック・ニコルソン/マリサ・トメイ/ジョン・タトゥーロ/アレン・コヴァート/ルイス・ガスマン/リン・シグペン/ウディ・ハレルソン/ヘザー・グレアム/ジョン・C・ライリー/ハリー・ディーン・スタントン
30点満点中16点=監3/話3/出4/芸3/技3
【怒り抑制セラピーの担当医は、とんでもないクワセモノだった】
ペット関連商品の会社で働くデイヴは、小さい頃から内気でイジメられっ子。上司にアイディアを横取りされても「出世のため」と耐え、恋人のリンダにもプロポーズできぬまま。そんな彼が飛行機の中でトラブルを起こし、裁判所から『怒り抑制セラピー』を受けるよう命じられる。大声で歌わされたり、女を口説かされたりと、次から次へデイヴに無理難題を吹っかける担当医バディ・ライデル。こんなことをして、何の役に立つのやら……。
(2003年 アメリカ)
【さぁみんなで“グースフラバー”と唱えよう】
うん、そう、人間は怒っちゃっていいんである。道を塞いで立ち話をしている連中は撃ち殺したっていいし、駅前を占拠する自転車やバイクはプレス機にかけ、客を順番通りにさばけない店員は給料をもらうべきではないのだ。
けれど「カっ」となった次の瞬間に来るのは自己嫌悪。だから、ガマン。
デイヴの周囲にも、イライラさせることがあふれている。自慢げに振る舞うイヤミな友人、電話を一方的に切る横暴な上司、マナーを知らないドライバーや仕事に不熱心なキャビンアテンダント……。
中でもクワセモノなのが、そのデイヴを担当する精神科医のバディ。『アイ・フィール・プリティ』を歌いながら恍惚の表情を見せ、気に入らない料理を皿ごと投げる。いやもう、こんなのと四六時中顔を突き合せてなきゃいけないというのは地獄。いまさらだけれど、ジャック・ニコルソンって、こういうイっちゃってる役は天下一品だな。
彼のセラピーを受ける患者たちも、お近づきになりたくない人ばかり。どう見てもトラブルメーカーになりそうなヤツが案の定デイヴをトラブルに巻き込んで、そんな理不尽な仕打ちの中でどれくらいデイヴがガマンしているかもサラリと描いて、全体として軽快だ。
ただ、いわれなき嫌疑によってデイヴがセラピーを命じられる設定はいいとしても、飛行機の中の出来事はデイヴでなくても「これで『キレやすい』なんて判断されるのは変」と思ってしまうし、ウエイトレスとのゴタゴタもしっかりした弁護士&法廷なら問題にならないことのはず。そのあたりの無理っぽさが気になって、イマイチお話に乗っていけない。
ま、それはラストで解決してくれて、潔いバカ映画へと昇華させているので文句をいうべきではないのだろうが、「ひょんなことから『キレやすい』と判断される」という部分をもっと上手に処理して欲しかったものだ。
それにしても、出演陣は豪華。何人かの役者はノンクレジットだし、ジーターにクレメンスにジュリアーニ市長、いかにも『怒り抑制セラピー』が必要なあの人も大笑いを誘う。そういう、わかりやすいニギヤカさもあって、気軽に楽しめる映画だ。
たまにはこれくらい軽い作品で笑ってストレスを解消しつつ、いざ怒りを抑えられないような事態に直面したら“グースフラバー”と唱えることにしよう。この呪文にどの程度の効き目があるのかは疑問だけれど。
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