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2006/05/23

ラスト・ショット

監督:ジェフ・ナサンソン
出演:マシュー・ブロデリック/アレック・ボールドウィン/トニ・コレット/トニー・シャルーブ/キャリスタ・フロックハート/ティム・ブレイク・ネルソン/バック・ヘンリー/ジョーン・キューザック/レイ・リオッタ

30点満点中16点=監3/話3/出3/芸3/技4

【映画製作、実は囮捜査】
 FBIのジョー・ディヴァインは、マフィアのトミーがトラック組合から搾取していることを知る。そこでジョーは“映画製作”という囮捜査の手法を考え出す。自らプロデューサーに扮し、撮影に使うトラック組合との仲介にトミーを利用、そこで尻尾をつかみ、さらに大物マフィアまで芋づる式に捕らえようというのだ。脚本と監督に映画館支配人のマシューを起用し、有名女優のエミリーを主演に迎えて準備は快調。だが思わぬ事態が……。
(2004年 アメリカ)

【成功に必要な説得力と華が不足】
 ユニークでシャープでカラフルでちょっぴりサスペンスフルなオープニングに始まり、以後も軽快なテンポでストーリーは進む。
 登場人物それぞれも、事情を知らず初監督就任に浮かれるマシュー・ブロデリック、熱心なアレック・ボールドウィン、冷徹なレイ・リオッタ、デフォルメされた名女優を演じるトニ・コレットなど、ピタリとハマっている。
 監督に決まったマシューが最初に買ったものとか、マシューの恋人ヴァレリーと犬との関係、マフィアに近づくためにアリゾナが舞台の映画を無理やりロードアイランドで撮影することになるくだりなど笑いも多いし、いくつかの名画へのリスペクトも感じさせて、飽きない展開だ。

 が、華がない。スカっと抜けるような、ポーンと弾けるような楽しさが足りないのだ。
 いくら軽快とはいえアップダウンは少なくて、やや一本調子。思ったよりも撮影準備が順調に進んでハラハラ感がないし、いつの間にかエンディングへとたどり着いている、という感じだ。

 最大の敗因は「囮捜査の手法として始めた映画に、ジョーが次第にノメリ込んでいく」という、この映画のもっとも大切な部分に説得力がないことだろう。
 現状のクライマックスは、(1)作戦停止につながる出来事→(2)それでも続行を主張するジョー→(3)ファーストシーンの撮影、という流れになっているが、(1)の前には絶対に(0)映画の面白さに気づくジョー、という場面が印象的に描かれなければならなかった。それがあってはじめて、この作品に映画としてのまとまりも華も生まれたはずだ。
 監督のジェフ・ナサンソンはスピルバーグの『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』と『ターミナル』で脚本を手がけた人。前者は見事な構成と展開を見せたけれど、後者は鮮やかさの足りない作品だった。今回は後者に近いテイストの映画となってしまっている。

 ただ、映画好きと○○○○は紙一重ということは、よくわかる。通常は離陸する機体が映される飛行機での移動シーンをジェットエンジンの音だけですませて「ああ、航空会社とのタイアップを取れなかった(取らなかった)のね」なんて感じさせて、さりげなく映画界の内側も匂わせる。幻の映画となってしまった『アリゾナ』ファーストシーンの完成度の低さ(というか、野暮ったさ)に「しょせん、その程度の映画だった」という皮肉も漂う。

 だから、悪い映画ではないんだけれど、どうしても足りない部分が気にかかって16点に甘んじてしまった作品だ。

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