π(パイ)
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ショーン・ガレット/マーク・マーゴリス/ベン・シェンクマン/サミア・ショアイブ/パメラ・ハート/スティーヴン・パールマン
30点満点中16点=監4/話2/出3/芸3/技4
【天才数学者は世界の謎を解き明かせるのか?】
チャイナタウンの狭いアパートに閉じ篭り、コンピュータに囲まれて、人との接触を避けるようにして暮らす天才数学者マックス・コーエン。彼は、世界の全事象は1つの数式で表せると信じ、研究を続けていた。その真理へとたどり着いたかに思われた瞬間、コンピュータは謎の数列を吐き出して故障してしまう。さらに、子どもの頃から彼を悩ませている頭痛が激化。企業からのエージェントやユダヤ教の神秘主義者にもつきまとわれて……。
(1997年 アメリカ)
【ヒステリックな画面が哲学をミステリーにする】
スタートレック・シリーズや『GANTZ』(作・奥浩哉)に登場する転送機は、どうやら人間の分子構造をデータ化して瞬間的に遠隔地へと送る機構を持つようだが、つまり、人間は数字に置き換えられるってこと。神は自らの姿に似せて人間を作ったのだとしたら、神=数字ともいえる。
とはいえ、そもそも数字・数学って人間が作り出したものだし、聖書だって人間が考案した言語によって人間が書き上げたもの。数字にしろ宗教にしろ、そこに真理を求めようというのはムチャなことなのかも、という疑念はある。突き進んだところで、結局は脳のキャパシティを超え、思考の迷宮に陥って破滅。
あるいは真理に近づいた者を、神がゼロへと戻すのか。
明らかに、若い作家が頭の中で組み立てた自分だけの世界をストーリー化した、自主制作的な空気が色濃い映画。
この手の作品は、よほど自分の中のキ印的部分と同調しない限り、真剣に考えても疲れるだけなので「ああ、要するにアパートの中で話の進む『エヴァンゲリオン』ね」ですませておくことにする。
テーマやストーリーや人物像はともかく、映像的には見ごたえがある。露出をあえて統一せず、あるときは荒い粒子、またあるときはスチール写真にも似た繊細な粒子のモノクロ画面が、強烈なコントラストとともに迫る。
カメラの周囲を人物が歩き回ったり、カメラを人物に固定して走らせたりなど意欲的な絵作りが多く、マッシヴアタックのヒステリックな音楽や位相の狂ったような音声とともに神経症的なイメージを醸し出す。シーンの切り替えかたもスピーディだ。
数学×哲学÷ビョーキというネタを、上手く映像化した作品だろう。
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