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2006/06/18

インサイド・マン

監督:スパイク・リー
出演:デンゼル・ワシントン/クライヴ・オーウェン/ジョディ・フォスター/ウィレム・デフォー/キウェテル・イジョフォー/クリストファー・プラマー

30点満点中17点=監3/話3/出4/芸4/技3

【銀行に立て篭もった強盗たち、その目的は?】
 マンハッタンの信託銀行に4人組の強盗が押し入り、人質50人とともに立て篭もる。交渉人としてキース・フレイジャーが到着し、犯人の要求が時間の引き延ばしを意図していることに気づく。いっぽう銀行の経営者ケイスは「貸金庫の中に、どうしても他人に渡したくないものがある」と、弁護士のホワイトを雇い、彼女を交渉にあたらせようとする。それぞれの思惑や意地が絡み合って時間が過ぎ、人質たちは恐怖を味わい続ける。
(2006年 アメリカ)

【よくできているが、もっと面白くできたはず】
 スパイク・リーは初体験。もうちょっと尖がった作風なのかなと思っていたら意外と観やすい真っ当なエンターテインメントだった。ハラハラあり、ニヤリあり、意外性もあり。

 見どころとしては、まずは絵作り。本来は100映さなければならないところを95の範囲で切り取っている、という感じ。それでも違和感はなく、映すべきものはきっちりと映されていて、画面に密度を生んでいる。銀行内とその前の道路、警察の司令車内部にほぼ舞台が限定される映画だけに、こうした“濃さ”によって広がりの乏しさを補う手法は正解だろう。
 そうして作られる画面に、音楽が気持ちよく重なる。ややベタな感じもあるが、スリリングなシーンはスリリングに、間の抜けたシーンではクスクス笑いを誘うように、BGMが物語を助けている。

 配役では、デンゼル・ワシントンが、有能だけれどちょっとくたびれたオヤジ、というのが面白い。シャツのシワがリアル。犯人のリーダー役クライヴ・オーウェンにも落ち着きと自信、引き返せない決意とちょっぴりの不安が漂っていて適役だ(このふたりがいいだけに、ジョディ・フォスターについては「別にこの人じゃなくっても」と感じたけれど)。

 ただ、お話としては、もっともっと面白くできたはずだ。
 強盗やケイス会長の行動の“目的”と、強盗を成功させるための“手段”のユニークさを等分に描いているのだが、“目的”のほうには結局たいしたヒネリがないし、いっぽう“手段”のほうはかなり早い段階で成功することが示されるうえに、ラストにはちょっと無理もある。
 序盤から、強盗たちの行動のソツのなさ、警官たちの手際のよさ、犯人と交渉人との駆け引きの面白さが畳み掛けるように描かれて、「この先どうなる?」というワクワク感ドキドキ感はキープするのだけれど「どういうことなの、えっ、そういうことなの!」といった驚きや、物語を爽快に落とす配慮には欠けている感じ。
 また、せっかく多彩な人質が用意され、14万ドルの小切手が出てこないとヤバイという状況があり、警察にとって想定範囲外である弁護士ホワイトからの横槍という出来事もあるのに、それらを十分には生かし切れていないようにも思える。
 よくできたクライム・サスペンスを見慣れた目には、ちょっと物足りない内容、画面に密度はあるけれどお話の密度はイマイチ、と感じてしまう。

 いや、デキとしては良質なのだ。もしこれが、たとえば『奇跡体験アンビリーバボー』の「こんな強盗事件がありました」的再現フィルムなら手放しで褒め称えよう。けれど劇場用映画としては「よく作られているけれど、名作となるには何か1つ決定的なインパクトが足りないよね」と思わせる仕上がり。すごく美味しい料理なんだけれど、もっと美味しくて、しかも安い店を私は知っている、といったところだろうか。

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