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2006/06/20

ブルー・レクイエム

監督:ニコラ・ブークリエフ
出演:アルベール・デュポンテル/クロード・ペロン/オーレ・アッティカ/ジャン・デュジャルダン/フランソワ・ベルレアン

30点満点中16点=監4/話2/出4/芸3/技3

【彼はなぜ、そこで働き始めたのか?】
 現金輸送会社ヴィジラントでは、1年間に3度も輸送車が襲撃され、警備員9名と通行人2名が犠牲になっていた。さらに業績の悪化からアメリカ資本に買収されることが決定する。ここで働き始めた元銀行員のアレックス・ドゥマールは、同僚たちに「襲撃団のスパイが紛れ込んでいる可能性はないのか?」などと訊ねながら彼らの細かなデータを収集、慣れぬ銃を握って今日も輸送車に乗り込む。果たしてアレックスの狙いとは?
(2004年 フランス)

【思いつきや空気はいいが、物語として未熟】
 オープニング、警備員たちの与太話と突然の出来事との落差でグっと惹きつけるが、その後はハッキリと浅さのわかるシナリオ
 経験のない新人をいきなり輸送の現場に送り出す(仮にそれが事実だとしても何のエクスキューズもないのは映画的にどうか)のは乱暴だし、警備員それぞれに生活感がなく、ヴィジラント社とクライアントや銀行との関係についての描写も希薄で「警備会社の内幕を覗いている」という意識が湧いてこない。
 アレックスが部屋を借りたホテルのメイド・イザベルの扱いもなおざり、アレックスが同僚を監視する様子も割愛、ある人物が裏切り者であることを示す伏線もなし(アメリカ資本から送り込まれたスパイ=ヤンキーの犬が誰かはすぐにわかるけれど)。
 パンフレットなどに掲載される1000字程度のあらすじに、何も足さずそのまんま映像化した、というイメージ。ふくらみが、ほとんどない。

 にも関わらず最後まで見せるのは、演出がそこそこイケているから。常にゆっくりと動くカメラ、抑制された音楽、無機質な警備会社の内装が、冷たく殺伐とした空気を画面上に作り出す。
 展開が遅く、ストーリーにふくらみがないぶん冗漫な序盤、およそ活劇とは思えない雰囲気だが、それが中盤になると「アレックスはヒーローではない。これは颯爽とした英雄譚ではない」というアピールだと思えるようになる。そう考えれば、悪くないテンポだ。
 またアレックスを演じたアルベール・デュポンテルの、決してプロフェッショナルな警備員ではないおどおどした感じもいい。

 ハリウッドでリメイクされるというが、確かに、この程度のストーリー=ふくらみやディテールに乏しいシノプシス的な脚本であるがゆえに「もっと面白くできる」と思わせる。
 そう、もっと面白くできるのに、と感じさせる作品だ。

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