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2006/06/01

オープン・ウォーター

監督:クリス・ケンティス
出演:ブランチャード・ライアン/ダニエル・トラヴィス

30点満点中15点=監4/話2/出3/芸3/技3

【取り残されたふたり。周りは広い海、そして……】
 仕事人間のスーザンとダニエル。ようやくの休暇を取り、夫婦はカリブへとバカンスにやって来た。リゾートの中にあっても心から仕事を追い払えないふたりだったが、ダイビングは十分に満喫。ところが浮上してみると、ふたりをここまで運んできた船が見当たらない。ガイドの勘違いにより、スーザンとダニエルは広い海の真ん中に取り残されてしまったのだ。救助が来ないまま時間ばかりが過ぎる。やがてふたりの周囲には、サメの姿が……。
(2003年 アメリカ)

【やりたかったことは形になっているんだけれど】
 クリス・ケンティスとローラ・ラウの夫婦が、製作から脚本から撮影まで担当したという作品。字面ほど手作り感はなく、むしろ「金はないけど時間はあるんで、好きなもんをじっくり作りました」という印象。しがらみとか大人の事情とかにあまり囚われず、やれる範囲でやりたいことをやったという空気が滲み出ている。

 手持ちであることを強調したブレのある画面やズームの多用など、ドキュメンタリー風(というかインディーズ風)の撮影。派手さはないものの、1カットに3~4テイクかけた丁寧さもあって、テーマに沿った絵は出来上がっているといえるだろう。
 主演ふたりは無名だが、だからこそ「身近な恐怖体験」というリアリズムも感じられるし、時間が経つに連れてやつれていく様子も立派だ。
 極限の恐怖は笑いと紙一重に位置すること、それを過ぎれば、あとはただ思考の麻痺へ向かうしかない、という事実もしっかり描かれていた。あまり好きなタイプの映画ではないし、低予算バレバレなんだけれど、ただの「好きなもんが好きなように撮った安っぽい映画」に堕すことなく、しっかりとした固形の読後感を残す作品には仕上がっていた。
 だから、心意気と努力は買おう。

 が、新しい恐怖がない。予想の範疇というかわかりやすさ重視というか。
「ああ、人間そうなっちゃうのね」はあるんだけれど「え、人間ってそうなっちゃうのか」がない。サメが我が身の周囲を泳ぎ、我が身をかすめていく恐怖は味わえるのだが「うわっ、いやだなぁ」という真っ当な感想にプラスアルファされるべき「!」がないのだ。
 また、海面に漂うふたりをやや俯瞰気味に捉えた画角が多く、それに反比例してアイレベルの、つまり「波のうねりに隠れて自分がどこにいるのかわからない」というカットが少ない。しかも人物とカメラの距離は15cm~10mの範囲内にとどまり、グっと引いたショットが少ないから孤独感も十分には出ていない。
 内容的にも、正味50分のストーリーを無理やり70分強に仕立てたという感じ。「時間の経過が狂気を呼ぶ」ことを示したかったのはわかるが、物語性の面でもそれなりの工夫が欲しかった。

 やりたかったことは、わかる。やりたかったことを、出せてもいる。ただその“やりたかったこと”が、ちょっと浅かったかな、という映画だ。

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