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2006/06/24

ウィンブルドン

監督:リチャード・ロンクレイン
出演:ポール・ベタニー/キルステン・ダンスト/サム・ニール/ニコライ・コスター=ワルドウ/ジョン・ファヴロー/バーナード・ヒル/エレノア・ブロン/ジェームス・マカヴォイ/オースティン・ニコルズ

30点満点中17点=監4/話3/出3/芸3/技4

【センターコートは、ふたりに微笑みかけるのか?】
 かつては英国代表の名テニス・プレイヤーとして鳴らしたピーター・コルトだったが、年齢による衰えには勝てず、ランキングも120位と低迷。今回の全英オープンを最後に引退しようと決意していた。そんな時に出会ったのは、奔放な言動で売り出し中の若手米国人プレイヤー、リジー・ブラッドベリー。遊びのつもりだったふたりは、やがて真剣な恋に落ちる。そこからピーターの快進撃が始まり、逆にリジーは調子を崩していくことになる。
(2004年 イギリス/フランス)

【ラブコメというよりも、笑えるテニス映画】
 ラブコメには、恋愛と笑いはもちろん、主人公たちの周辺、物語の舞台となっている“場”や“環境”のシッカリとした描写も求めたい。登場人物たちがその職業である必然性、そういう環境だからこそ起こるアクシデントなど、設定と展開が密接に結びついていないとダメだと思う。
 それが出来ていなかったのが『ノッティングヒルの恋人』(ロジャー・ミッシェル監督)、きちんとクリアしていたのが『10日間で男を上手にフル方法』(ドナルド・ペトリ監督)。映画以外だと、恋愛、笑い、学校生活を有機的に結びつけたコミック『ラブロマ』(とよ田みのる)が、このジャンルの大傑作だと感じている。

 で、本作。思わず微笑んでしまうオープニングに始まり、CGやアニメ的なカット割りとアングルを多用した試合シーン、クリス・エバートやジョン・マッケンローの起用など、かなり「テニス映画であること」が重視されている。特にサラウンドで客席の野次を拾い上げた決勝戦は抜群の臨場感で、本当の試合を見ているような気がした。
 全体としては「プロのテニス・プレイヤーにしちゃあハシャギすぎなんじゃないの?」という気もするが、リジーが審判に難癖をつけるシーンで彼女がどんなプレーヤーであるかを示したり、勝っているときのゲン担ぎ、調子のいいエージェント、ボールを取り損ねることで表現される緊張感、それまでの軽い雰囲気から一転して低音によって感じさせる心臓の鼓動……など、まさにテニス映画。試合後のピーターが、リジーではなく、まず家族のもとへ走っていくのもリアルだ。
 運動神経の鈍そうなキルステンの試合シーンをかなり割愛し、そこそこ動くポール・ベタニーを躍動させることに絞ったのも奏功している(テニス指導は1987年の全英オープン覇者パット・キャッシュらしい)。

 そして「テニス・プレイヤーであるからこそ」の展開もあるし、ジェット音だけで飛行機に乗らなかったことを表現し、モノクロのテレビを持ち出すことでピーターの父親が息子を見守ってきた年月を感じさせ、彗星や犬やボールボーイやホテルの従業員たちといった小道具と周辺キャラを上手くストーリーに盛り込み……と、細かなところまで練られていて、かなりテンポがよくて隙の少ないシナリオ。コメディとしても及第点をあげられるだろう。

 ただ、何度も当ブログで問題にしている“切なさ”が、ちょっと不足。ピーターは快進撃を続けるがリジーは調子を落とす、そこから始まる「交際を続けるのか離れるのか」という天秤にまつわる切なさが、上手くオモテに出てこなかったように思える。ピーターとリジーがそこまで惹かれあうことについての説得力も、やや薄め。
 つまり「ラブ」の部分が食い足りないのだ。

 とはいえ、愛と笑いをまぶしたテニス映画としては、マズマズ以上のデキにはあるだろう。楽しく観られる映画だと思う。

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