M:i:III
監督:J・J・エイブラムス
出演:トム・クルーズ/フィリップ・シーモア・ホフマン/ヴィング・レイムス/マギー・Q/ジョナサン・リス=マイヤーズ/ミシェル・モナハン/ケリー・ラッセル/ビリー・クラダップ/バハー・スーメク/ローレンス・フィッシュバーン
30点満点中18点=監4/話4/出3/芸3/技4
【タイムリミット48時間の困難なミッションに挑む】
数々の不可能任務=ミッション・インポッシブルをクリアしたIMFの工作員イーサン・ハントも、いまは訓練生の教官となり、彼の正体を知らないジュリアとの結婚を控えていた。が、教え子リンジーが武器商人デイヴィアンに拉致されたと知り、現場へと復帰する。救出作戦は成功したかに思えたが、それは、デイヴィアンの復讐、ジュリアの危機、さらにはIMF上層部の裏切り行為が絡み合う新たなミッションの始まりに過ぎなかった。
(2006年 アメリカ)
【混じりっ気なしの“工作員アクション”映画】
アームレストを握り締めながら、あっという間の2時間。この手のお話って、どう考えたって主人公が死ぬわきゃないんだけれど「うわっ危ない!」「次はどうなるの?」と、ワクワクハラハラさせてくれる。
いや、突っ込みどころや無理めの設定、しっかり見せていない部分はいっぱいあるのだ。あんな重兵器をどうやってベルリンに持ち込んだのか(準備期間1日で)、220ボルトで感電死するのか、中国とアメリカを結ぶ携帯電話に時差はないのか……。
つまりは強引、薄ぅ~いリアリティ。けれど「んなこたぁどーだっていいじゃん、面白けりゃさ」という開き直りが全編に満ち、しかも成功しているのだから素晴らしい。
たとえば、読唇術、走るイーサンの前を横切るクルマ、床に散乱する交通局のパンフレット、のどに張られる「声マネ装置」と声の分析、侵入すべきビルの屋上が三角形である必要性、結婚式でもっとも魅力的な表情となるジュリア、「教える」ことを職業とするイーサンがジュリアには何も教えられないという皮肉、その皮肉を生かしつつジュリアの存在の意味も上手にストーリーへと組み込んだクライマックス……。
必要以上には説明しないが必要なことはちゃんと見せる。リアリティよりも「誰にどんな役割を与え、どんな道具でミッションを遂行すれば面白い展開になるか」を重視している。設定とアイディアと展開とカットが密接に結びついている。1つのアクションやシーンをどんなカットと編集で構成すればスピード感と臨場感が出るかをちゃんとわかっている。どこでどんな“ちょっとした出来事”を挿入すればストーリーがピリっと引き締まるかを全力で考えている。
要は「面白い映画を作るんだ」という気概がしっかりわかるデキとなっているのだ。
それと恐らくはこの監督、ストーリーテリングだけじゃなくて、スタッフの使いかたやコーディネーション能力、適材適所のセンスにも優れているのではないか。上海ユニットには中国人の名前がズラリと並ぶのだが、米国内やベルリン、バチカンのシーンと違和感なくつながる(もとは東京で撮ることを考えていたそうだ。こういう「優れた仕事」に接することでスタッフのスキルが向上することを考えると、日本の映画関係者がいい意味での“ハリウッド流”に触れる機会を失したわけで、無念)。
またマスク・メイカーのデザインとしてはシド・ミードの名前がクレジットされていた。贅沢だけれど、これもまた画面をピリっと引き締めるために欠くべからざる方策だったのだろう。
会話シーンではアップがやや多めなのだが、『LOST』での絵作りを思い出してファンなら納得。それにギラギラした質感と色合いで、イーサンの焦りやデイヴィアンの冷酷さ、ルーサーとイーサンの信頼関係などを描き出していて好印象でもある。物語のキーとなる「ラビット・フット」がマクガフィンとして扱われているのも、ああ正真正銘のスパイ・アクションとして仕上げたかったのだなぁと微笑ましい。
そう、これは、細かなことはどうでもよくて、でも細かなところにまで気を配って作られていて、「困難なミッションにどう立ち向かうか」という筋立てを目一杯面白く描くことに注力し成功した、スパイ・アクション映画なんである。
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