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2006/07/27

コープスブライド

監督:ティム・バートン/マイク・ジョンソン
声の出演:ジョニー・デップ/ヘレナ・ボナム=カーター/エミリー・ワトソン/トレイシー・ウルマン/ポール・ホワイトハウス/アルバート・フィニー/クリストファー・リー/ジェーン・ホロックス/ディープ・ロイ

30点満点中17点=監4/話2/出3/芸4/技4

【花嫁は死者! つきまとわれる若者の行く末は?】
 ビクター・バン・ドートは魚屋の息子。上流階級への進出を夢見る両親によって、無理やり貴族の娘と結婚させられることになる。その相手が、没落貴族エバーグロット家の娘ビクトリア。ふたりは挙式のリハーサルではじめて顔を合わせ、たがいに惹かれあうようになる。だが、ひとり薄暗い森で愛の誓いを練習するビクターの言葉が、失意のまま死んだエミリーの霊を蘇らせてしまう。ビクターの結婚相手は、ビクトリアか、それともエミリーか?
(2005年 イギリス アニメ)

【丁寧に作られた作品だけが映画と呼べる】
 パペットアニメも観てみるかと、話題の『緑玉紳士』(栗田やすお監督)を手に取ったが、どうもスキっとせず「この雰囲気や流れは映画よりアドベンチャーゲーム向きだよなぁ」と10分ほどでギブアップ。
 代わって鑑賞したのが本作。

 ああパペットアニメって、単に人形を動かすだけじゃダメなのねってことがよくわかる。緻密さ、繊細さ、コンセプトをきっちりとストーリーや映像に落とし込むセンスがあるからこそ、人形は人形でなくなり、断片的なコマは1本の映画へと昇華するのだ。

 まず、色と造形が素晴らしい。
 地上界は墨絵の質感。無機質な表情と動きのキャラクターたちが、閉塞的な人間社会にピタリとマッチする。
 それに反して冥界は、実にカラフル。死者あるいはスケルトンならではのアクションも盛り込まれてキャラクターの動作はダイナミック。天国よいとこ一度はおいで、である。
 そしてモノトーンの地上界では、そこに立つコープス・ブライド=エミリーの唇だけが赤く、哀しみと尽きぬ愛を象徴する。
 世界の作りかた、雰囲気の作りかたが、実に上手い

 その世界の空間の広がりかたは立体的で、カメラは空間内を縦横に動いてお話の小ささをカバーする。クライマックスの挙式シーンで見られるソフトフォーカスと豊かな照明も絶妙だ。
 キャラクターたちは、総じて50年代~60年代の演技。それもまたストーリーに馴染む。熟練のジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、エミリー・ワトソンといった「ちゃんと芝居ができる」役者たちが、抑制のきいた声、懐古的大仰演技とアニメ的演技の中間でバランスを取りながら人形に命を吹き込んでいく。
 ダニー・エルフマンの音楽も相変わらず楽しく、これまた作品世界の完成度を高めるのに貢献する。

 唯一「なんてことのない話」という点(いや、霊に結婚を迫られるってのは『なんてことのない』話じゃないんだけれど、ヒネリとかエピソードの積み上げがあまり見られなかった、という意味で)だけを除けば上質のパーツで構成された映画であり、見かたを変えれば「なんてことのない話をここまで面白いものに仕上げた」良作であるともいえる。
 もともと製作に時間のかかるストップモーション・アニメだが、さらに丁寧に手間隙をかけて作れば、ちゃんとこういうモノが出来上がるという見本だろう。

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2005年 アメリカ・イギリス 監督:ティム・バートン、マイク・ジョンソン 製作 [続きを読む]

受信: 2006/08/22 02:06

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