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2006/07/13

ベルヴィル・ランデブー

監督:シルヴァン・ショメ
声の出演:ジャン=クロード・ドンダ/ミシェル・ロバン/モニカ・ヴィエガス

30点満点中17点=監4/話2/出3/芸4/技4

【最愛の孫を救うため、お婆ちゃんと愛犬が大奮闘】
 お婆ちゃんからあれやこれやと買い与えられても、孫息子のシャンピオンは浮かぬ顔。ある日、お婆ちゃんはシャンピオンのベッドの下から1冊のアルバムを見つける。中は自転車の記事や広告の切り抜きでビッシリ。晴れて自転車を手にしたシャンピオンは、やがてツール・ド・フランスに挑むまでに成長する。ところがレース中、シャンピオンが何者かに誘拐される。お婆ちゃんは愛犬ブルーノや偶然出会った3人姉妹とともに、孫の救出に挑む!
(2002年 フランス/ベルギー/カナダ アニメ)

【絵と音と語り口で“世界”を感じさせる】
 映画には“世界”があるべきだと思う。広がりと奥行きがあって、物理法則が働いている、そういう意味での“世界”だ。
 単に「そこにあるものを切り取っただけ」だったり、あるいはカメラレンズの視野角の制約ゆえに「一定の範囲内に無理やり人と物を収める」ような画面は、立体感が希薄で“世界”を感じられず、好きになれない。

 その点、この映画の“世界”の作りかたというか、立体感の出しかたは実に立派だ。デフォルメされた絵柄は好みではないが、縦横に広がる街並み、遠くから近づいてきてブルーノの鼻先をかすめて走り去っていく電車、ナナメ右へと進む船、そのすべてが奥行きと広がりを感じさせてくれる。
 洋服も、平面的な肌の上に平面的な生地が乗っかっているのではなく、クルリとカーブを描いた襟元からクビが突き出ていることがわかるように描かれている。
 あるいはクルマ。カーブを曲がったりデコボコ道を通る際に、車体部分と荷台部分が別の動きを見せて、立体感と実在感とを味わえる。
 全体に3DCGの“良さ”を存分に生かした作画だ。

 音にもこだわりがあるようだ。タイル、木の床、石畳と、歩く場所によって足音がちゃんと変わる。お婆ちゃんがくわえるホイッスルは、吹くときはもちろん吸う際の息づかいまでひゅうひゅうと鳴る。
 そうして再現されている質感・空気感がまた“世界”を感じさせてくれるのだ。

 テーマ曲『The Triplets of Belleville』をはじめとする音楽も上々だ。そのまんま小島麻由美やEGO-WRAPPIN'あたりのアルバムに入っていてもおかしくないような(つまりモロに好みである)、ジャジーで、ちょっとルーズで、でも軽快な楽曲の数々が、フィルム・ノワールっぽさを漂わせて、これまた「ダークでオトナで淫靡で元気」な“世界”の構築に寄与している。

 そして“世界”を表現するのに、下手な説明など不要。極限までセリフは排除され、登場人物の行動を「見せてわからせる」ような作りかたが試みられている。
 それがやや意識的にすぎるというか、あまりに徹底的すぎるとも思うし、そのおかげでストーリー的な濃さがなくなっているのも確かだろう。でも、ブルーノ(ただの飼い犬じゃない! 物語を進めるのに必要不可欠な存在として機能する)の役割、ボート屋の大将の扱いなど、細かな部分まで気を配ったシナリオになっていて、まとまりはいい。
 なによりも作り込まれた立体感に、感心することしきりの作品である。

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2002年 フランス=カナダ=ベルギー 2004年12月公開原題:Triplet [続きを読む]

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