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2006/07/08

交渉人 真下正義

監督:本広克行
出演:ユースケ・サンタマリア/寺島進/國村隼/水野美紀/小泉孝太郎/石井正則/高杉亘/松重豊/金田龍之介/八千草薫/柳葉敏郎

30点満点中16点=監4/話2/出3/芸3/技4

【奪われたのは最新鋭の地下鉄 犯人の狙いは?】
 クリスマス・イブの夜、バッテリーを搭載して自走できる最新鋭の車両クモE4が何者かに遠隔操作されて走り始め、東京の地下鉄は大混乱に陥る。次いで公園のゴミ箱と地下鉄車両基地では爆発が発生。犯人は警視庁初の交渉人・真下正義警視を名指しして「これはゲームだ」と宣言する。果たして犯人の狙いは何なのか? 現場担当の刑事・木島や地下鉄指令室長・片岡らの協力を得て、真下は、犯人の企みとクモE4を止めることに挑む。
(2005年 日本)

【ま、だいたいこのあたりで、という意識で作られた作品】
「明らかに作りの甘い映画だよね」
「個人の犯罪としてはやることがデカくありませんか?」
「それは映画を面白くするための、いい意味での強引さとして許せるんだけれど、そのアイディアと設定、登場人物たちのキャラクターをストーリー作りに生かし切れていない。なんか、いつの間にか状況が進展しているというストーリー展開なんだよな」

「直前に『24-twenty four-』を観ていたわけですが、あれだって脈絡なく『え?』っていう展開になりますよね」
「いや、質が違う。あっちは出来事や人物、組織を上手く配してあって、事件とか人物の相関に“つながり”と意外性があるんだ。それに対してこっちは、AがあったからBが起こった、CさんがいたからDが解決したという連続性が希薄だし、意外性ではなく唐突という感じが否めない」

「でも『24』なみのパワーを日本の映画に期待するのは無理でしょうし、CTUとかロス市警の捜査力・機動力を日本の警察や地下鉄職員に求めるのも酷でしょう」
「だとしても、みんな仕事しなさすぎだよ。たとえば、これだけの危機的状況にありながら、なんでホームに人がいるのよ? 全体に、動いている公僕の数が少なすぎる」
「司令室長とか小泉坊ちゃんたち交渉課準備室のスタッフ、それとSAT、線引き屋さんあたりはちゃんと働いていましたよ」
「肝心の真下がさ、交渉らしい交渉をしていない」
「一方的に会話を切って相手が食いついてくるのを待つ、というテクニックを披露しましたが」
「そんなの、他の映画でさんざん見てきた。あとは胡散臭い謎解きをしただけだろ。警視庁初の交渉人というプレッシャーもなければ、真下が持つ交渉人としての才能も描かれていない」
「確かに真下らしさを感じたのは、雪乃さんとの絡みだけでしたね」
「木島さんはクルマで走っているだけ。爆発物処理班なんか、一般市民の近くでなにバチバチとリード線切ってんだよ。指揮者だって、なんでシンバルが鳴らないことに疑問を感じねーんだ」
「みんな、やるべきことをやっていない、と」
「つまり、プロが少ない。機密保持が重要といいつつ、司令室までカエル便とかケーキ屋が入ってきたりするし。真下が司令室を飛び出していく際の無理やりの一致団結感なんてさ、『はぁ?』って感じだよ。『いや、それより自分の仕事しろよ、おまいら』って」

「いちばん気になったのは、リズムの悪さというか、緩急のつけかたのマズさですかね」
「全体的なスピード感は上々なんだよ。何しろ、いつの間にか状況が進展しているから、観るほうもそれに引っ張られる。実にスピーディー。ある意味では、このレベルのシナリオをよく最後まで“もたせた”なぁって感心するくらい強引なまでにスピーディー。ただ、この映画に出ている人たち、いちいち止まって喋るだろ」
「ええ。真下と片岡司令室長との会話を周囲がぼーっと突っ立って聴いていたりしましたし」
「悠長なんだよ。そのあたりがリズムの悪さとして感じられて、全体に緊迫感が薄められる結果になっているんだろうね」

「音楽やキャラクターなど『踊る大捜査線』との連続性は大切にされていましたよね」
「うん、つまり、そういうこと。こいつら使って、なにか交渉もの+パニックものを作れないかなー、というノリで出来上がった作品。“本格的”な頭脳犯罪サスペンスではない」
「TVの2時間スペシャルで十分、といったところですか」

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