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2006/07/20

ポーラー・エクスプレス

監督:ロバート・ゼメキス
声の出演:トム・ハンクス/ノーナ・M・ゲイ/ピーター・スコラーリ/エディ・ディーゼン/マイケル・ジェッター

30点満点中18点=監4/話2/出4/芸4/技4

【北極行きの急行が子供たちを乗せて走る】
 イブの夜、サンタクロースの存在に疑いを持ち始めた少年は、ベッドの中でなかなか寝つけずにいた。すると家の前に、雪を掻き分け、轟音とともに列車が到着する。それは北極行きの急行『ポーラー・エクスプレス』。車掌から「乗るか乗らないかは君次第」といわれた少年は、戸惑いながらも飛び乗って、同世代の少年少女たちと北極点へと向かう。それは、子どもだけに許された夢の世界へと進む、波乱万丈の旅の始まりだった。
(2004年 アメリカ アニメ)

【CGであることに酔う映画】
 たいていの親はサンタを信じる子どもを微笑ましく見つめるけれど、いつまでも信じている子には眉を顰める。ずいぶんと勝手な話だ。
 自分自身の子どもの頃を振り返れば、サンタクロースの存在を、いつから信じなくなったのか、記憶はない。というよりサンタの存在を信じていた記憶がない。それは幸せなのか不幸せなのか。ひょっとすると、サンタの存在を疑って結論を出すという通過儀礼って、すんごいトラウマまたは成長の糧になりうるものじゃないだろうか。

 で、サンタストーリーの多くは、この通過儀礼のビフォア側、つまり「信じる心を失わないでね」というメッセージを込めて作られる。子どもが子どもでいてくれることを望み、と同時に、すっかり大人になってしまった人にも「信じるピュアな心の美しさ」を訴えて涙を誘う、という図式。本作もその範疇にあり“サンタを巡ってよく語られる大人と子どもの関係”からハミ出さない物語といっていいだろう。
 加えて、ハチャメチャというか、脈絡がないというか、隠喩に富みすぎていてまとまりがないというか、いかにも童話らしいストーリー。静かなオープニングと余韻を残すエンディングは大人向けと感じたが、訳もわからず一気に突き進む中盤は子供向け。
 ミュージカル仕立てで行くのかと思えばそうでもないし、主人公以外のビフォア&アフターに関しては描写が希薄だし、シナリオの出来は、そう誉められたものではない。
 どうせなら、もっとハチャメチャで、エピソードも増やし、ミュージカル仕立てで押し通してくれればよかったのだが。ココアの給仕がワラワラと登場する場面では、初めてディズニーランドへ行ったときにも似たワクワク感を覚えた。その感覚を持続させてくれたならば、と思う。

 が、画面のデキは素晴らしい。お話のグダグダ感を補って余りある仕上がりだ。
 トム・ハンクスが一人何役もこなしているわけだが、彼の演技を表情までそっくりそのままCG化する『パフォーマンス・キャプチャー』は、確かに効いている。細かな目の動き、口もとの角度、体の揺らぎなど、そのシーンに求められるニュアンスがしっかりとCGで描かれ、セリフと絵のつながりも密接に感じられる。
 いっぽうで、腕や指のプロポーションや動きの硬さなど、CG特有の違和感も残っているのだけれど、それに目をつぶってもいいと思わせてくれた。

 表情・演技以外の部分も上々。光、髪、ラバー、氷、鉄など素材の質感、空間の奥行きや高低、滑っている感じ、落下、速さなどがしっかりと再現されている。風に飛ばされた切符の行く先を1カットで追うなど、CG作品であることを生かしたアングルと絵作りにも配慮して、CGアニメとしての完成度は極上といっていいだろう。
 ストーリーやメッセージに真新しさを期待せず、CGアニメにどんなことができるかを見届ける。そういう作品かも知れない。

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