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2006/07/26

ドラえもん のび太のワンニャン時空伝

監督:芝山努
声の出演:大山のぶ代/小原乃梨子/野村道子/たてかべ和也/肝付兼太/林原めぐみ/関智一/江川央生/島谷ひとみ/かないみか/古川登志夫/千々松幸子/大平透/阪脩/泉谷しげる

30点満点中18点=監4/話4/出3/芸4/技3

【イヌとネコの国でうごめく謀略に、のび太たちは……】
 川原でイヌを拾い、イチと名づけて可愛がるのび太。その後いつの間にかのび太の部屋は捨てられたイヌや野良猫でいっぱいに。ドラえもんの提案で3億年前の地球にイヌやネコたちを送り込む、のび太、しずか、ジャイアンとスネ夫。翌日、ふたたび3億年前へ向かった一行だったが、タイムマシンが時空の歪に巻き込まれ、予定より1000年も後の世界に到着。そこでは進化したイヌやネコたちが言葉を喋り、国家まで作られていた。
(2005年 日本 アニメ)

【楽しさもテーマ性も完成度も上質】
 ドラえもんに求められていることは何かといえば、エンターテインメント性とテーマ性の両立だろう。
 いや、それはすべての映画に求められていることなんだろうけれど、両方を充足させるほどのキャパシティを持った作品は、そうそうない。無理やり両立なんか狙わずに、“楽しかったね”か“考えさせるね”、どちらか一方さえ一定のレベルに達していれば、いい映画になるというのも事実だ。

 が、ドラえもんの場合は明らかに、その両立を目指している。しかも、子どもも親も安心かつワクワクして観られる作品(子どもの頃からドラえもんを観ている世代が、いまや親なんだね)であること、単に楽しいだけではなく説教的要素も持つこと、とはいえ説教臭くならず感動で締めくくること、という仕上がりを目指している。

 今回の説教は“ペットを大切に”だったわけだが、ともすれば四畳半的になりがちなこのテーマを、あくまで説教として意識させながらも、タイムパラドックスを絡め、「人間という種の業」にまで言及し、つまりは風呂敷を目いっぱい広げたのに、ちゃんとエンターテインメントとしてまとめ、きっちりと風呂敷を畳んでみせるあたりが、ドラえもんの凄いところ。

 とにかくストーリーにも演出にもスキがない
 意味深な序章に始まり、映画恒例「ドラえも~ん」のお約束を逆手にとって笑わせるオープニング、今回の物語の前提となる設定の描写・説明、ハプニング、イヌネコの世界にもいたドラえもん+4人組、けれどあっちのドラえもんは“悪”というヒネリ、スリル満点に描かれるネコジャーランド、アクション、そしてラストで明らかにされる真相……と、流れるように進む。しかも小さなハラハラと伏線をあちこちに撒き散らしながら。
 例によってパロディもふんだん。『ファンタジア』がある、『スター・ウォーズ』がある、『タイタニック』がある。『ガッシュ』っぽいところもあれば、インダストリアの三角塔を思わせるモニターもある。その解読もまた楽しい。
 クライマックスのスピード感なんか、あーた、オリジナルと思われる『ターミネーター2』と比べても遜色ないし、少なくとも『ターミネーター3』の100倍は楽しい。

 相変わらず、作画レベルはきわめて上質。魚政周辺のディテール、絆創膏を貼ったドラえもん、けん玉を持つのび太の指、うたた寝していたママのほっぺの鬱血など、とことん細かくてグレードの高い絵。
 これが旧声優陣にとって最後の映画となったわけだが、心なしか大山のぶ代はいつもより張り切っている感じ。その元気のよさが勢いを生んで、作品にもプラスとなって作用している。

 つまらないものにはしないぞ、面白いものを作ろう、そういう気概がすみずみまであふれている、というのが実感だ。

 このレベルのものを安定して送り出せる域に達した『ドラえもん』なのだから、次は世界を目指して欲しい。世界っていうか、62億人が楽しめる内容のもの。映画版の原点である『のび太の恐竜』のリメイクは成功に終わったが、次はそもそもの始まり、ドラえもんが22世紀からやってくるところを映画化してはどうだろうか。『ドラえもん ビギニング』とか。
 ドラえもんがどれほど優れた作品であっても、いわば“キャラクターもの”であり続編であって、ドラえもんワールドに親しんでいないと理解できない部分があるのも事実。そうした前提を抜きにして万人が楽しめる「パート1」を作ってもらいたいものだ。

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