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2006/08/23

パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト

監督:ゴア・ヴァービンスキー
出演:ジョニー・デップ/オーランド・ブルーム/キーラ・ナイトレイ/ビル・ナイ/ケヴィン・マクナリー/ステラン・スカルスガルド/トム・ホランダー/ナオミ・ハリス/ジャック・ダヴェンポート/ジョナサン・プライス

30点満点中17点=監3/話2/出4/芸4/技4

【海の主との契約とベケット卿の陰謀が、ジャックたちに危機を呼ぶ】
 海賊ジャックの逃亡を手助けした罪で、死刑を言い渡されるウィルとエリザベス。ベケット卿は「ジャックが持っているコンパスをもらってくれば無罪放免だ」とウィルに告げる。いっぽうジャックも、海底に棲む海賊デイヴィ・ジョーンズとの契約期限が切れて、彼に魂を渡さなければならないというピンチに直面していた。すべての危機を回避する唯一の手段は、デイヴィの心臓を収めたチェスト(宝箱)とその鍵を見つけ出すことだった。
(2006年 アメリカ)

【これは続編であり、つなぎである】
 上映時間2時間半は明らかに長すぎる。
 問題は“非アクション”の部分。セリフや表情などによって各登場人物の状況&心情説明がおこなわれるわけだが、ここがやや冗漫でダラダラ感がある。特に冒頭部分はもっとコンパクトにまとめて、早めに食人島へと突入すべきだったろう。
 昨今のアクション映画では“つかみ”が大切。いきなりのクライマックス級シーンで観客を惹きつけるのが常道(そして正道でもあると思う)だが、その本流から外れた作りのように思えた。

 また、ダラダラ感の大きな要因としては、例によって字幕翻訳のクォリティの低さ(というか「この映画にふさわしい雰囲気の欠如」)が足を引っ張っている部分もあるが、それ以上に、物語の本筋に関わってくる人物関係が多くて煩雑という点もあげられる。
 続編ということもあり、それぞれの関係をより進展させなければならなかったりとか、旧作に引き続いて登場する人物を目一杯生かさなければならなかったりとか、そういう要求もあったのだろうが、あれもこれもと欲張ったせいで焦点が不鮮明になってしまっている。
 おまけにジャックが依然として優柔不断・行き当たりばったりなヤツなもんだから「えっと……、いまこの人は誰のために何をしようとしているんだっけ?」という疑問を引きずったままストーリーが進み、どの関係に感情移入して観ていいやら、つかみづらいのだ。

 パート3へのつながりを強めるためにはジャックとウィルとエリザベスの三角関係に絞って描き込むべきだったろう。このうち現状では、ジャックとウィルの関係描写が不足してしまっている。ベケット卿の登場シーンをもっと減らして、そのぶんを主役3人に振り分けるべきだった。

 未整理なストーリーの反動というわけでもないだろうが、アクションシーンの爽快さとユニークさは極上だ。思わず笑ってしまう場面はいくつもあるし、新しいアイディアもふんだんに盛り込まれていて飽きさせない。なぁんも考えずに観ていられる。
 それに解像度と透明度の高い画面の中で“うごめく”特殊メーキャップやCGは上質だし、劇場が揺れるほどの重低音なども味わえて「映画館の大スクリーンで(みんなで笑いながら)観るに値する作品」にはなっている。

 加えて、キーラ・ナイトレイである。ジャックがゆらゆらバカ、ウィルが猪突猛進バカ(いや、船長としての資質の高さも見せるのだが)に徹しているのに対して、エリザベスは、沈んだり、スネたり、剣を振るったりとさまざまな顔を見せてくれる。だいたい、最初に映されるのが彼女のバストだからね、この映画はエリザベスのためにあるといっているようなもんだ。
 ジャックの元カノ=ティア・ダルマを演じたナオミ・ハリスの神秘性とオンナっぽさもよかった。『28日後…』ではなんとも思わなかったんだけれども、実は色っぽい人だったんだなぁと再発見。

 で、まとめれば「これは、あくまでも続編であり“つなぎ”である」ということ。もう正真正銘の“つなぎ”である。パート1を観ていないとわからない部分も多いし、たぶん観た人全員が「パート3も観なくちゃしょうがないじゃん」と思ってしまう、そんな作り。
 本作のダラダラ感が、パート3をスマートに仕上げるための策(つまり伏線部分をまとめたのがパート2)であればいいのだが。それはそれで、パート3の前にDVDでもういっぺんパート1&2を観なくちゃいけない、ということにもつながるのだけれど、それっくらいはガマンできる。というか、1から3までぶっ通しで観てはじめて十二分に楽しさを満喫できるシリーズかも知れない。

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