NOTHING ナッシング
監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
出演:デヴィッド・ヒューレット/アンドリュー・ミラー/マリ=ジョゼ・クローズ/ゴードン・ピンセント
30点満点中16点=監3/話3/出3/芸3/技4
【なにもかも、みんな消えてしまった!?】
極端な怖がりのためボロ家に引き篭もって暮らしているアンドリュー。そんな彼と生活を共にするデイブは、身勝手な男。ある日、アンドリューは幼児暴行の、デイブは横領の濡れ衣を着せられ、加えて高速道路の合間に建つ我が家は法律違反だと告げられる。解体作業員と警官に囲まれ、出頭と立ち退きを迫られるふたり。「ほっといてくれ!」と叫んだ瞬間、周囲から一切のものが消えて白一色、世界には彼らとボロ家が存在するのみとなる。
(2003年 カナダ/日本)
【面白くないわけではないグダグダ映画】
テレビゲーム風、あるいは『モンティ・パイソン』風のコラージュからなるオープニングが、これはコメディだと告げる。ヴィンチェンゾ・ナタリがお笑い? という違和感を残したまま、グダグダと物語は続く。
いや、ホントにグダグダ。
実質ふたり芝居で、アンドリューもデイブもまぁよく喋る。喋りすぎのうえに画面はボロ家+真っ白な空間+暑苦しい男ふたりという絵柄で占められている。グダグダといっても別にテンポが悪いわけではないし、破綻しまくりということもないのだが、お話が前へと進まず、どちらかといえば舞台向きに思える内容だ。
一応は映画的な面白さもある。何もない空間に人と人だけ、という状況設定を生かし、距離感や遠近を麻痺させるユニークな絵作りも見られるし、高速道路の隙間に建つ家の周囲を猛スピードでクルマが駆け抜けていくことを示す音響も、なかなかのもの。画面と音楽のマッチングもいい。
そういった技術面や、自分にとってイヤなもの・不快なもの・怒りの源となるものを捨てていく&消していくというのはこういうことなんですよ、というテーマをしっかり映像化したことは評価したい。
が、この監督なら、もっと“お話としての面白さ”も盛り込めたはず。あるいは「落ち込む気持ちを消す」などの価値観と行為が持つ重大性を、笑いの中でもキラリと光るものに仕上げられたはず。
バラエティ番組の中のよくできた10分コントを、1時間半に伸ばしたものを観た、という気分。TSUTAYAでの稼働率は意外と高いようだけれど、「わはははっ」て人より「なんじゃコリャ!?」って人が圧倒的に多いだろうなぁ。
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