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2006/09/24

頭文字[イニシャル]D THE MOVIE

監督:アンドリュー・ラウ/アラン・マック
出演:ジェイ・チョウ/鈴木杏/エディソン・チャン/ショーン・ユー/チャップマン・トウ/ジョーダン・チャン/リュウ・ケンホン/ケニー・ビー/アンソニー・ウォン

30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4

【秋名峠、下り最速を決める戦いが始まる】
 走り屋集団・妙義山ナイトキッズのリーダー、群馬最速を目指してGT-Rを駆る中里毅は、秋名の峠で、ボディに『藤原とうふ店』とプリントされたAE86(ハチロク)に抜かれてしまう。ハチロクの主は、高校生の藤原拓海。拓海は、かつて『秋名の神』として知られた父・文太の指示で豆腐を配達するうち、超絶的なテクニックを身につけていたのだ。その拓海を狙って赤城レッドサンズでFCに乗る高橋涼介やプロの須藤京一らが集まる。
(2005年 香港/中国)

【浅くて薄くて華がない】
 走り屋は嫌いです。迷惑です。バカです。1mmたりとも支持する気にはなりません。でも子どもの頃は「大きくなったら86に乗りたい」と思っていました。どっちかというとレビンの方が好みでしたが。いまはシビックの助手席でナビする日々です。

 さて、そんなヘタレをあざ笑うかのように拓海の操るトレノは実にカッコイイ……とは、いいがたい。てゆうか、拓海がショボイ。正確にはジェイ・チョウがショボイ。なんか華がない。あっちでは大スターらしいが、原田泰造の出来損ないみたいで。
 それに比べて高橋涼介=エディソン・チャン(こっちは福永祐一似)の、まさに涼しげでカッコイイこと。杏ちゃんの可愛らしいこと。そしてアンソニー・ウォンの味のあること。主人公がいちばんショボイのって、この手の映画ではどうなのよ、と思う次第。

 それら人物の画面への収めかたも、カットをこれでもかというくらいに割ってジャンプさせて、スローにするわストップさせるわで、『インファナル・アフェア』シリーズにも増して小細工を散らしてある。まるでOVAかテキストアドベンチャー。『街』を思い出してしまう。役者たちもみんなアニメ演技だし。
 クルマの撮りかたも、スピード感より収めかたや雰囲気を重視。背後から忍び寄る感じとか、ハチロクとGT-Rのラインの違いとか。一応はしっかりと必要なことを拾い上げるし迫力もあるが、その合間に挟まれるのはショボイ主人公のアップなので、いまいち乗り切れない。やかましすぎるBGMも集中力を阻害する。

 なにより、ストーリーの薄さ・浅さが痛い。たとえば、ふだんは単独で走っているはずの拓海がバトルで見せる戸惑いとかは、もっと出せたはず。レース用のエンジンを積むって、それはもはやハチロクじゃないのでは?(サーキット用にチューンした86なのか)という疑問も浮かぶ。拓海がなつきに寄せる想いも扱いが中途半端だ。
 だいたい「小回りvsパワー」っていう対決の図式じたい、ロータス・ヨーロッパvsポルシェ・カレラの昔から進歩なしだし。

 それなりにテンポの切れはあるし、杏ちゃん(の太もも)とアンソニー・ウォン親父のおかげで楽しい映画にはなっているが、浅くてやかましくて、あまりカッコよくなかったな、という印象を残して終わる作品だ。

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