アンダーワールド
監督:レン・ワイズマン
出演:ケイト・ベッキンセール/スコット・スピードマン/シェーン・ブローリー/マイケル・シーン/ケヴィン・グレイヴォー/アーウィン・レダー/ロビー・ギー/ソフィア・マイルズ/ビル・ナイ
30点満点中17点=監3/話3/出3/芸4/技4
【吸血鬼vs狼男 その抗争の本当の意味とは?】
長老ビクターに拾われてバンパイア(吸血鬼)となり、ハンターとして数百年間働いてきたセリーン。リーダー格のクレイヴンがライカン(狼男)の長ルシアンを倒したことで闇の戦いは終わりに近づいているはずだったが、地下道に大勢のライカンが潜伏していること、なぜかライカンが人間の青年マイケルをつけ狙っていることをセリーンは知る。周囲の反対を無視してマイケルと接触したセリーンは、やがてこの闘争の真意に接近していく。
(2003年 アメリカ)
【楽しさの素となる枝葉&ふくらましが足りない】
ケイト・ベッキンセールにアクションは無理というのが『ヴァン・ヘルシング』(スティーヴン・ソマーズ監督)を観たときの感想だったが、相変わらずのお嬢さん走り。
いや、作られたのはこっちの方が先。本作を観た誰かが「こいつアクションできるやん」とかいって『ヴァン』に起用したってことはないか。あるとしたら、この監督にまんまと騙されたわけだ。
主演女優のノロノロをフォローする“処理”の巧みさは見事。ワイヤーや絶妙のカット割りを駆使し、覗き込むようなカメラワーク、スロー多用にコマ落とし、と、上手くスピード感と迫力を出している。
サングラスに映る銃撃戦、オーバーラップなどをセンスよく用いたシーンの切り替え、顔にはクッキリとした陰影が描かれ、青系で解像度の高い画面が全編を貫いて、実にスタイリッシュ。ゴシック調で退廃的なバンパイアの暮らしぶり、お目覚め直後のビクターのヴィジュアルイメージなど美術面の仕事も上出来だ。
ライカンのリーダーが腕に装着した剣は、いったん2センチほど出てから引っ込む。そのディテールが、カッコいい。天野義孝か、あるいはアクション・アドベンチャーのムービー部分か、といったノリ。
なるほど、徹底して“カッコよさ”を追求したこの世界でなら、ケイト・ベッキンセールの非人間的な顔立ちがよく映える。体のキレのなさに目をつぶって(というか技術でフォローして)使いたくなる。メインのキャストをイギリス出身俳優たちで固めたのも「古(いにしえ)よりの戦い」というイメージを増強してくれて、なかなかよろしい。
が、この世界にトップリ酔えるほどには、お話は面白くない。
重大事項をセリフで説明してしまっているのは多少我慢するとしよう。それぞれの利害関係とか、血の宿命とか、意外な真相とか、ストーリーをストーリーとして成り立たせるのに必要なこともちゃんと盛り込まれている。
だが、それ以上のプラスアルファ、物語に枝葉やふくらましがない。下手に風呂敷を広げすぎなかったのはいいが、逆に狭すぎるのもどうか。たとえばマイケルが医者であることを生かした展開、クレイヴンの思惑など、もっともっと話を面白くできた要素は転がっているのに。
ふぅ~ん、へぇ~はあるけれど「おっ」「うわっ」「そうかっ」がない。だから、よくできているとは思うけれど楽しくないのだ。
この先も話が続きそうだなぁ、なんか全9巻くらいあるコミックのアタマ3巻を映画化したような内容だなぁ、と思ったら、すでにパート2が作られ、一応パート3まで予定しているのだとか。
文句をつけたものの、このカッコよさと丁寧さは買えるので、パート2以降に、より物語を面白くするためのふくらましや厚みが加えられることを期待したい。
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