大いなる休暇
監督:ジャン=フランソワ・プリオ
出演:レイモン・ブシャール/デヴィッド・ブータン/ピエール・コラン/ブノワ・ブリエール/リュシー・ロリエ
30点満点中19点=監4/話4/出4/芸4/技3
【小さな漁村の人々がついた、未来をつかむための小さなウソ】
カナダ、サントマリ・ラモデルヌ島。かつては漁業でにぎわったこの島もいまではすっかりさびれ、島民は100人あまり、人々は失業保険で食いつなぐ毎日だ。が、工場の誘致に成功すればふたたび輝きを取り戻せるはず。企業が出した条件は「島に医者が常駐していること」。町長となったジェルマン、その幼馴染のイヴォン、銀行支店長のアンリらは、休暇で島を訪れたルイス医師が島に居つくように、さまざまなウソを重ねるのだった。
(2003年 カナダ)
【キレイに流れてホっとさせられる】
物語が、実にスムーズに流れていく。
お話の前提や状況の「説明」はするが最小限にとどめ、ルイス医師が島を好きになるよう仕向けるための、クリアしなければならない課題を次々と提示、そして解決していく様子を軽妙な音楽に乗せてテンポよく描く。
その合間に、島民がみな顔見知りであることを示すような描写、子ども、海、男と女などがサラリと挟まれる。空をバックにしたクリケットなど絵柄もビューティフル。全体の流れが、実に心地よい映画だ。
この流れのよさの原動力となるのが、「それだけアクティヴなら工場誘致に替わる策だってルイス以外の医師を見つける算段だって立てられるだろうに」と思わせるジェルマンの行動力と、引っ張られながらも懸命なイヴォン、小物らしいジタバタぶりが可笑しいアンリといった、小ズルくて、でも悪人にはなりきれないオヤジたちの悪戦苦闘ぶりだ。
とにかく、オヤジたちの表情がいい。刻まれたシワひとつひとつが、このコメディに実在感を与える。
そして、なんといってもセリフの上手さ。レアル元町長の「鼻のことはいうな」から「そうか医者か」へとつなげる展開、「朝起きるための理由が欲しくないか」といった鋭い言葉が絶品だ。
語るべきことは多くない。そんなに深い映画ではない。テレビサイズといえるかも知れないし、ある意味では突拍子もない話でもある。
ただ、幻想的でユーモラスなオープニングから、厳しい現実、ドタバタ劇が巻き起こり、そしてファンタジーへ。キレイに流れて、ホっとさせられる爽快な作品である。
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