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2006/10/25

ROCK YOU!

監督:ブライアン・ヘルゲランド
出演:ヒース・レジャー/シャニン・ソサモン/マーク・アディ/ポール・ベタニー/アラン・テュディック/ローラ・フレイザー/ルーファス・シーウェル/クリストファー・カザノフ/ベレニス・ベジョー/ジェームズ・ピュアフォイ

30点満点中18点=監4/話3/出3/芸4/技4

【貴族よりも貴族らしく、槍試合を駆け抜ける青春】
 中世ヨーロッパ。槍試合出場のため諸国を巡るエクター卿に従者として同行するウイリアムは、主人が死亡したため卿になりすまし、本来は貴族にしか許されていない試合に出場する。その後も貴族を騙って各所を巡り、連勝を続けるウイリアム。貴人の娘ジョスリンとの出会い、卑怯なアダマーとの確執、好敵手コルビルとの信頼関係などを通じて成長し、本物の貴族たろうとするウイリアムだったが、出生の秘密が壁となって立ちはだかる。
(2001年 アメリカ)

【各要素が上手にまとめ上げられた、いい娯楽作】
 映画にしろ小説にしろ「ストーリー」の中で描かれるもの・目指すもの・行き着く先は、たいていの場合、アイデンティティの確立か、愛か、事件、ということになるだろう。
 その3つをバランスよくミックスさせて質の高い娯楽作に仕上げてある。

 まずはアイデンティティの部分。幼い頃からの夢だった騎士・貴族(というよりも、いっぱしの男)へと突き進むウイリアムの成長と葛藤は、どこか三谷幸喜版の近藤勇を思わせる。「やるんだっ」という決意はちょっと唐突にも思えるが、そんなウイリアムの青さが清々しさとなって映り、勝つことと同等以上に正義や男気を重視していることも伝わってきて、悪くない。

 続いて恋愛関係。ウイリアムとジョスリンが互いの心を確認しあう際のセリフはやや回りくどく、もう少し“身分違いの恋”という切なさが出ていてもよかったと感じるが、これまた若くて不器用なウイリアムと、エキセントリックなシャニン・ソサモンの組み合わせが、絵に描いたような青春ラブストーリーの趣で瑞々しい。

 そして事件。見るからに敵役のアダマーとの関係や試合部分がこれに相当するが、ここが本作最大の見どころだろう。
 いきなりエクター卿が死んでいるところから始める潔さ、競技ルールの説明をサラリと盛り込む上手さが、まずは上等。兄貴分のローランド、騒がしいワット、お調子者のチョーサー、勝気な女鍛冶屋ケイトと、ウイリアムの周辺に配されるキャラクターのわかりやすさもいい。クリスティアーナ役ベレニス・ベジョーも可愛いし。

 全体として、ナイキのパロディをはじめとする単純で頭の悪いコメディっぽいノリがあり、あるいはアメリカンプロレスの舞台裏のような猥雑さやスポーツ・エンターテインメント的な高揚感があり、クイーンなどのロックミュージックもフィーチャーし、そうした“イマっぽさ”と中世という舞台とのミスマッチを楽しませる作り。
 下手をすると各要素が融合せず浮いてしまい、ドタバタ喜劇あるいはコントになってしまううところだが、美術・CGがしっかりと仕事をし、どこか殺伐とした感覚が漂い、意外と腰のすわった雰囲気が醸し出されている。
 撮影・編集の力も大きいのだろう。あるゆる角度からカメラを回し、バッツンバッツンとカットを切ってつなぎ、スローモーションも織り交ぜて、槍試合が持つシンプルな凄み、ガチンコでぶつかり合う迫力を上手に描き出している。

 もちろん監督・脚本のブライアン・ヘルゲランドのコーディネート能力が高いからこそ、こうした各要素をピタリとまとめ上げることができたのだろう。これまで『L.A.コンフィデンシャル』(カーティス・ハンソン監督)以外は、この人の脚本(※)にあまりいい印象はなかったが、今回ちょっとだけ「やればデキるじゃん」と偉そうに見直したりして。
 前述の唐突さや、多彩なキャラクターにもっと見せ場を用意してあげてもよかったなとか、コルビルとの信頼関係だってまだまだ話をふくらませただろうとか、食い足りなかった部分はあり、「これ、30分×26話のテレビアニメにした方が絶対に面白いよな」と感じたのも確かだが、まずは十分に楽しめる娯楽作に仕上がっていたと思う。

※ブライアン・ヘルゲランド脚本作品
 『ブラッド・ワーク』(クリント・イーストウッド監督)
 『ミスティック・リバー』(クリント・イーストウッド監督)
 『ボーン・スプレマシー』(ポール・グリーングラス監督)
 『マイ・ボディガード』(トニー・スコット監督)

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