ブラザーズ・グリム
監督:テリー・ギリアム
出演:マット・デイモン/ヒース・レジャー/ピーター・ストーメア/レナ・ヘディ/ジョナサン・プライス/モニカ・ベルッチ
30点満点中15点=監3/話2/出4/芸3/技3
【ペテン師の兄弟が魔女伝説に挑む】
1800年代初頭、フランスの統治下にあったドイツ。魔女や幽霊などの民間伝承に怯える人々を助けるのは、ウィルとジェイコブのグリム兄弟。だが実は小道具と手下を使って魔物を作り上げ、それを退治してみせるというトリックで金を儲けるペテン師たちだった。からくりがバレてフランス軍に拉致された彼らは、幼い女の子が次々と姿を消す事件の解決を命じられる。事件の舞台・マルバデンの森は、本物の魔女伝説が残る地だった。
(2005年 アメリカ/チェコ)
【設定を生かしつつもフツーのアドベンチャーにとどまる】
いまも親しまれている数々の童話をのこしたグリム兄弟が、執筆前にしていた仕事と出会った事件、という設定から考えられる範囲でいろいろと遊んでいる。『赤ずきん』に『白雪姫』に『ヘンゼルとグレーテル』、ペロー作の『シンデレラ』っぽい場面まで。グリム童話に疎いのでそれ以上はわからないが、恐らくはもっと詰め込まれているのだろう。
が、それ以上ではない。なによりギリアム監督らしさが少ない。
いや、それっぽいところはあるのだ。広角レンズでナナメに切り取られたアングルとか、隅々まで露出と色合いをコントロールすることで作り物臭が強くなった画面とか。
絵画的・挿絵的なイメージの連続は確かにギリアムっぽいし、音楽の使いかたで笑いをとる遊び心などはこの監督ならではのものだろう。怪物発見器などのガジェットも楽しい。
でも、毒というか、「こいつ、トチ狂ってるよな」と強烈に思わせる部分がなくて、これなら他の人でも撮れるんじゃないか、と感じてしまう。兄弟の心情とか性格形成に関してもあまり掘り下げられることはなく、表層的なストーリーとなってしまって哲学もない。つまりはフツーに楽しい(いや、あんまり楽しくないか)フツーのアクション・アドベンチャーだ。
見どころは役者だろうか。といっても、この作品の中で唯一「イっちゃってる」役柄=カバルディを演じたピーター・ストーメアと、魔女ですといわれれば納得するしかない神秘的な美しさをたたえたモニカ・ベルッチの存在感が突出している、という意味で、だが。
そして、すべてはキスで終わり、世は事もなし。フツーに楽しめるが、それはすなわち、後に残らない、ということを意味する。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント