スライディング・ドア
監督:ピーター・ハウイット
出演:グウィネス・パルトロー/ジョン・ハナー/ジョン・リンチ/ジーン・トリプルホーン/ザーラ・ターナ/ダグラス・マクフェラン
30点満点中17点=監3/話4/出4/芸3/技3
【もし、あのとき、電車に乗れていたなら……】
プロモーション関連の企業に勤めるヘレンは、些細な理由で会社をクビになり、引ったくりにも遭って顔に怪我を負う。そんな彼女を気遣う同棲相手のジェリーだったが、彼は元彼女のリディアと浮気を重ねていた。「もし、あのとき……」。ヘレンの悔恨と妄想が、もう1つの人生を作り出す。ヘレンが電車に“乗れた場合”に出会う新しい恋と、“乗れなかった場合”のジェリーとの日々、2つのケースを同時進行させて描くラブ・コメディ。
(1997年 アメリカ)
【お気軽妄想コメディにとどめない工夫もある】
えーっと、どっちがどっちだっけ? あっちが電車に乗れた場合で、こっちが乗れなかった場合。実際には乗れなかったんだから、こっちがホンモノの人生であるわけで……。
多少の混乱は頭の中で巻き起こるが、どっちがどっちかを意識しないままでも観られるよう、どちらの人生も楽しく軽快に仕上げられている。ヒットナンバーを多用したサウンドトラックに乗せて、テンポよく、適度に「あ~あ~、そんなことしちゃって」と思わせつつ、ヘレンの人生を描いていく。バンソウコウの有無や髪型など、あっちとこっちでヘレンに違いを作った配慮も効いているし。
どちらのグウィネス・パルトローもキュート。ジェリーとリディアの浮気現場を目撃した際の表情はリアリティたっぷりで笑わせるし、懸命さとか戸惑いとか決意とか浅はかさとか、等身大で演じ切る。そんな彼女をジワジワといたぶる(?)リディア役ジーン・トリプルホーンも抜群の悪女ぶり、そして神出鬼没ぶりにも爆笑だ。
で、単にお気軽妄想コメディにとどまらないよう、人生に対する含蓄に満ちたセリフが配される。「自分と他人の人生が、ときに絡まることがある。そのときには相手の力になりたいんだ」とか「女は望みを口にしないけど、手に入らないとわかると怒り出すの」とか。
そして最後には、実際と“もし”の間に横たわるものは果たして何なのかを考えさせるエンディング。笑いの中に、上手に『人生の真理』を織り込んだストーリー・作品であるといえるだろう。
実際と“もし”の対比における鮮やかさや、“もし”が発生する際の処理の安易さには不満が残るものの、楽しく観られる映画である。
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