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2006/10/16

親切なクムジャさん

監督:パク・チャヌク
出演:イ・ヨンエ/チェ・ミンシク/クォン・イェヨン/キム・シフ/オ・ダルス/コ・スヒ/キム・ビョンオク/イ・スンシン/キム・ジング/ナム・イル

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸3/技4

【親切、それは復讐への序章】
 ウォンモ君誘拐・殺害の犯人として投獄されたイ・クムジャ。刑務所内でも常に笑みを絶やさず、他の服役囚のために献身的な姿勢を崩さず、やがて彼女は「親切なクムジャさん」と呼ばれるようになる。慰問に訪れた伝道師の心をも突き動かすほどだったが、それは仮の姿。周囲の心を虜にする行為の目的は“恩を売る”こと。出所後、彼女を貶めた事件の真犯人ペク先生に復讐するための計画だったのだ。そしてクムジャが刑期を終える日が来た。
(2005年 韓国)

【悪くはない。でも哀しみと痛みはトーンダウン】
 いわゆる復讐三部作の掉尾を飾る作品。『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』にも増して凝った映像が特徴となっている。解像度の高い画面の中にひっそりと配置される○、△、ナナメ。白と紅のコントラストを強調したオープニングも実にグラフィカル。
 時制を入れ替えたり跳んで見せたり、回想の中の人物にナレーションを担当させたり、長まわしがもたらす緊迫感、クラシックやゴスペルに乗せてテンポよく進むシーンなど、演出的にも“凝り”が満載だ。
 ただし、いたずらに見た目優先に走らず、ストーリーもしっかりと追うし、それぞれの演出技法がお話に「!」を与える機能も果たしている。

 そこに佇むクムジャさん=イ・ヨンエが、実に美しい。復讐劇に必要なシャープさは不足しているものの、不幸と苦しみ、決意と“やつれ”をたたえた肌には、そそられるものがある。
 ペク先生役のチェ・ミンシクも、間抜けさと残忍性、淡々とした英語に懇願に諦観と、相変わらず多彩な顔で画面を引き締める。ジェニーを演じたクォン・イェヨンのピュアさは、作品内にホっと優しさを落としてくれる。

 が、ストーリーの衝撃性はトーンダウン。過去2作では「自分の身に降りかかるとは思わなかった意外な運命」に翻弄される人々の、切羽詰ったところにおける復讐や行為が描かれ、しかも先の読めない展開で最後までハラハラと楽しませてくれたが、本作にはそうした尖った部分がない。
 クムジャさんの笑顔や親切が「復讐のため」ということは早々に明らかにされてショックは薄いし、周囲もそれを知っていながら(つまりクムジャさんに利用されているのだと知りながら)彼女に恩返しするというのも多少無理がある。その後のクムジャさんの行動も予測の範囲内だ。

 全体として、自分にとってもっとも大切なものは何か? その何かを守るために犯してしまった過ちと悔恨、その悔恨を振り払うために選んだ行為と完遂の難しさ……といったことを通じて「復讐の価値」を考えさせるストーリーなのだとは思う。そして、クムジャさんの背中に回されるジェニーの腕から「贖罪とは単に『罪を贖う』ものではなく、大切な誰かに包み込まれ許されること」というテーマも浮き上がってくる。

 ただ、そこにあるはずの“痛み”が足りないように感じた。前2作にはあった、グシャっと心臓を鷲づかみにされるようなヤバさがない。また前2作では主に刃物や鈍器が人を傷つけるアイテムとして用いられ、その物理的な痛みと心の痛みがオーバーラップして物語の哀しみを強めていたのだが、今回は銃がフィーチャーされているせいか、それもない。
 結果、クムジャさんへの感情移入度も批判精神も中途半端なまま終劇を迎えてしまう。
 別に悪い映画ではないのだが、あまりにデキの良すぎた前2作と比べられる不幸な運命を乗り越えることはできなかった作品である。

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