亡国のイージス
監督:阪本順治
出演:真田広之/中井貴一/勝地涼/豊原功補/吉田栄作/谷原章介/チェ・ミンソ/岸部一徳/原田芳雄/寺尾聰
30点満点中14点=監3/話2/出3/芸3/技3
【乗っ取られたイージス艦を取り戻せ!】
海上自衛隊の護衛艦イージス「いそかぜ」が、テロリスト・ヨンファの策略と乗組員の反逆によって占拠され、東京湾へ向かう。ミサイルの弾頭に積まれているのは、わずかな量で多くの人を死に至らしめる最新の化学兵器GUSOH、その照準は東京。退去させられた先任伍長の仙石は単身で艦に戻って奪還を試みる。政府、自衛隊情報部DAIS、さらには謎の工作員・如月行らの思惑が絡み合う中、刻一刻と東京に危機が迫っていた。
(2005年 日本)
【無理が多くてカッコも悪い】
手順や組織やルールの馬鹿馬鹿しさ、イデオロギーを持つことと持たぬことの愚かさ、自衛隊法や戦争や平和漬けの日々の意味……。そうしたことをエンターテインメントの中で語ろうとして失敗したコメディ。
うん、そのあたりが妥当な評価だろう。
やりたかったことは、おぼろげながらわかるのだ。お話のはしょりかたやフラッシュバックの使いかたはマズマズで語り口にはテンポの良さがあるし、短いセリフでキャラクターの立場を説明してみせたりなど、いい部分もそれなりにはある。
でも、立ち位置がふらつくというか、「こういうものを作るんだ」というパワーや意気込みが持続せずに、腰が甘くなってしまった印象。あるいは、余分なものを詰め込まずにスピードを重視した結果、必要なものまで失われてしまった、という感じ。
たとえば、あの女の子が出てきた意味は? 反逆者やテロリストたちの背景は? 仙石はなんでそこまで必死になれるの? 誰も知らない点検用のドアなんてありうるのか? 読んでねーけど原作の如月って、たぶんもっとミステリアスでカッコいいだろ? 政府、なんもしてねーじゃん。なんもしてねーのに、ハイ解決って都合よすぎねーか?
「人間なら撃つ前に躊躇する」っていうキーワードも十分に生かされているとは思えないし、「たまたま居合わせた家庭に問題のある命知らずのバカが単身で敵に挑む」っていうフォーマット、使い古されてて萎えるし。
それにクライマックスのアレはね、さすがに笑っちゃったもん。
設定や展開だけでなく、演出的にも(一応は最後まで観られるくらいのクォリティではあったが)不可の部分が目につく。
大事なセリフもふつうの会話も1カットの中に収めて同じようなトーンで撮るのでメリハリがない。陸上も艦内も同じサイズで撮るので、やっぱりメリハリがない。船なんて、船らしく動いてこそ船のはずなのに、空気感とか広がり間とか動きとかが、陸上と区別のないものになっている。
スクリーンへの人・モノの収めかた、さらには芝居にも、どことなくB級特撮モノっぽさ、いってみれば『ゴジラ』っぽさが漂う。アクションに新鮮味がなく、総じて絵作りに大仰さが足りないのは、エンターテインメント作品として致命的だろう。
タイトルだけがカッコよくて、それ以外にカッコいい部分のない映画だ。
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