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2006/11/07

容疑者 室井慎次

監督:君塚良一
出演:柳葉敏郎/田中麗奈/哀川翔/八嶋智人/吹越満/佐野史郎/柄本明/真矢みき/筧利夫

30点満点中15点=監3/話2/出4/芸3/技3

【逮捕された正義の人。彼は無罪か、有罪か?】
 殺人事件の重要参考人として取調べを受けていた現職警察官が逃走、交通事故により死亡する。捜査の指揮を執っていた室井慎次警視正は、死んだ警官の母から刑事告発を受けて逮捕されるが、そこには弁護士・灰島秀樹の思惑が絡んでいるようだった。いっぽう警察内部では警視庁と警察庁の間で「責任のなすりあい」が起こり、灰島からの圧力も増して、独自に捜査を進めようとする室井、その弁護に立つ小原らは窮地に立たされる。
(2005年 日本)

【これを「映画」といわれたら、そりゃあ腹も立つ】
 当コラムでは『踊る大捜査線 THE MOVIE2』(本広克行監督)について「(同じTV局制作の『笑の大学』と比べて)よっぽど“映画”しているよ」と評した。
 で、その『踊る』のスピンオフとして作られた本作。何で読んだんだか、本作に関わったスタッフが「これ『映画』しているよ」と語ったという。

 ふ~ん、いちいち字幕で場所を明示したり、ナレーションで思いっ切り状況説明するのが、この人たちにとっては“映画”なんだ。

 常々考えているのは、たとえば当コラムで20点以上の評価を与えている各作品のように「演出、演技、映像技術、音楽などのコラボレーションによって、映画にしかできない展開・見せかたを実現している作品」こそが映画なんである。そこから逸脱して、“表現”することを避け、安直な“説明”に頼って、何が映画か

 さらに、ストーリー的・映像的にもところどころに無理がある、というか詰めの甘さが満載だ。
 容疑者の警官はあれで即死ってなぜわかる? なんでカメラの移動時に画面がブルブルと揺れる?
 スリーアミーゴスの間の抜けた登場も、『踊る』シリーズのファンサービスを徹底したという意味では立派だが、本作が持つグレイの空気感を台無しにしてしまっている。
 北新宿署の「現場」捜査官が室井サイドに立つキッカケは曖昧。灰島の動機とキャラクター設定も弱いし、そのおかげで小原弁護士が逆襲に転じるカラクリも取って付けた感が強くなってしまっている。

 しかも事件のオチは、死んだ警官の恋人杏子がとてつもないバカだった+解決するのは○○、というトンデモ物語
 中盤まで、一応は「正義を貫くための勇気」がテーマとなってストーリーを引っ張っていくのだが、結局は「バカは他人の人生をむちゃくちゃにし、権力は他人の人生を奪う」へと収束して、カタルシスはゼロ。
 ま、それが狙いなんだったら「はぁ、そうですか」というしかないが、なんだか肩透かしを食らった感じだ。

 そんなわけで15点となったが、点数と酷評の割には最後までちゃんと観られるモノにはなっている。スケールには乏しいものの登場人物たちの画面への収まりかたはスマートだし、役者たちがそれぞれ(上手いとか下手とかクドいとかクサいはあるけれど)懸命に演じようとしている雰囲気も伝わってきた。テンポもまずまずだ。
 そうしたいい部分が、なんだかなぁのストーリーや作りの甘さ、いってみれば「映画をナメている」制作姿勢によって帳消しにされてしまった作品といえるのではないだろうか。

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受信: 2006/11/15 13:49

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