イン・ハー・シューズ
監督:カーティス・ハンソン
出演:キャメロン・ディアス/トニ・コレット/マーク・フォイアスタイン/シャーリー・マクレーン
30点満点中19点=監4/話4/出4/芸4/技3
【姉と妹。もっとも大切な存在、大切な友人】
性に奔放で無職、夢だけを食べて生きているようなマギーは、弁護士の姉ローズを困らせてばかり。共通点といえば、父の再婚相手と上手くいっていないこと、そして亡き母の思い出くらいだ。マギーを真っ当にしようと心を砕くローズに対し、その恋人を寝取ってしまったマギーは、姉のアパートから追い出される。祖母エラがまだ生きていることを偶然知ったマギーは、フロリダ行きの飛行機に飛び乗る。そこには、新しい人生が待っていた。
(2005年 アメリカ)
【ちょっと立ち止まって、自分の人生を見直してみる】
「このキャメロン・ディアスは、いいよね」
「単にキュートというだけにとどまらず、ハマリ役ですし、ちゃんと演技していますし、観ていて『この作品でマギーを演じたことは、彼女にとって大きな自信につながったんだろうな』という印象を受けました」
「とにかく表情がいい。妹の顔、女の顔、娘の顔、よく覚えていないおばあちゃんと接する孫娘の顔……。その演じ分けが素晴らしい」
「おばあちゃんといえば、シャーリー・マクレーンも素敵でした」
「こっちも表情の作りでは負けていない。キリっと存在感も示す。でも、あくまでもマギーを引き立てるのに徹している。さすが」
「画面の色合いも印象に残りました」
「ちょっと暗めのフィラデルフィアの冬と、パステルカラーのマイアミの対比とかね。そこに乗っかる音楽も心地いいし、衣装もいろいろ」
「いわゆる“映画”っぽさというか、大仰なことは何もしていないし、画面作りもどちらかといえば地味なんですが、ファクターの1つ1つが大切にされていて、すみずみまで丁寧に作られている、といった感じですね」
「ストーリーとしては、一応はコメディなんだけれど、いろいろなことを考えさせるものになっているよな」
「マギーとローズとの関係、きょうだいや親子といった家族の絆、自己実現に必要なもの……。なかなか密度の濃い作品でした」
「ただしギッシリという感じじゃなく、説明しなくていいことは過剰に盛り込まないで、観る者の想像や共感や読み取り力にも依存している。そういう意味でも『考えさせる』作りになっている」
「ああ、たとえば『きっと彼女にとって人生初のA+なんだろうな』とか」
「ほかにキーワードとしては“どうにもならないこと”があげられる。誰にだって落ち込んだりキレたりして自己をコントロールできなくなることはある。ただ、そのキッカケとか、状況を引き起こす事件の重大性レベルとかは、人それぞれ。そういうことがうかがえる」
「苦境に立たされたとき、わざと自分を貶める行動を取ったりするのもありがちですね」
「うん。で、そこで道徳とか努力とか生きる意味とかを説いちゃうのではなくて、あくまでも出来事の描写にとどめてあるんだけれど、苦境は『自分を変える・進む道を見つける』ためのキッカケにもなりうるんですよと自然にアピールする雰囲気は作られている。そのあたりがさ、説教臭くなくていいよね」
「そもそも人生って、そういうものですし」
「そう、デカい事件だけが、人を変えたりするもんじゃない。そんなに都合のいいもんじゃない。どうにもならないことは、どうにもならない。人生につまづいたら、人生そのものがセラピーになるんだよ」
「環境を変えてみることは必要なんでしょうが、そこでは、何かを見つけるのと同時に『見直す』ことも大切なのかも知れませんね」
「いままでの蓄積とか歩みがあるわけだから、それらをキッパリ捨てて新しいものを見つけるなんて、相当に難しいことだよ」
「だから、ちょっと立ち止まって『見直して』みる。そうすると、誰かが自分にとって、自分が誰かにとって、かけがえのない存在になっているんじゃないだろうか、という気がしてくる」
「うん。そこで『そうだよ。その通りだよ』っていってくれる誰かがいてくれたなら、それが、その人にとっての『ピッタリの靴が見つかった瞬間』なんじゃないだろうか」
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