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2006/11/28

きいてほしいの、あたしのこと ウィン・ディキシーのいた夏

監督:ウェイン・ワン
出演:アンナソフィア・ロブ/ジェフ・ダニエルズ/デイヴ・マシューズ/シシリー・タイソン/コートニー・ジンズ/エル・ファニング/エヴァ・マリー・セイント

30点満点中16点=監3/話3/出4/芸3/技3

【大切なものはすべて、ウィン・ディキシーが教えてくれた】
 牧師である父とともに、田舎町ナオミへと越してきた少女、インディア・オパール。夏休みだというのに友だちもできず、憂鬱な日々を過ごしていたが、ある日スーパーマーケットで1匹の犬と巡り会う。ウィン・ディキシーと名づけられたこの犬とともに、図書館の老婦人、盲目の女性、ペットショップの若者……と、さまざまな出会いと会話を経験していくオパール。でも本当に知りたいのは、どこかへ消えたママのことだった。
(2005年 アメリカ)

【生きていくのに必要なこと】
 華やかさはないが手堅いな、という印象の作品。
 ほのぼのとして、どこか間が抜けていて、けれど不思議と寂しさが漂う町を背景に、ダイレクトに心情を描写するのではなく、出来事の連続としてのストーリーがつづられる。その出来事の中にキラっと光るセリフや一瞬を散りばめて、観る人それぞれに人生の意味や“大切なもの”を見つけてもらおうという作りになっている。

 1つのキーとなるのが、リトマス・キャンデー。作中でも語られているように「甘さと悲しさは分けられない」という事実の象徴として登場し、と同時に、悲しさを知っているからこそ誰かに優しくなれる、哀しみやいたわりを周りの人と共有することが生きていくということ、そんな、人生の真理を教えてくれる役割を担う。

 そして、ウィン・ディキシー。誰とでも友だちになれて、話を聞くのも上手くて、歌が好きで、好奇心旺盛、楽しいことがあれば笑顔を見せる。これってまさに、人生に必要なこと、大切なことじゃないか。

 ナオミの人々はリトマス・キャンデーを口にして、自分が何者であるか、この町で生きていくとはどういうことかを思い出す。
 たぶんオパールは、ウィン・ディキシーがいなくても、人生の荒波を乗り越えられる強い女性に育つことだろう。だって父親から「うちに犬なんて必要ない」といわれて「犬には私が必要なの」なんて切り返せる女の子なんて、そうそういないよ。
 ただウィン・ディキシーの存在は彼女にとって、こんなふうに成長していっても間違いではないんだ、という心の拠りどころになってくれるはずだ。

 画面作りにも展開にも演出にも鮮やかさや強烈さはなく、テレビサイズといっていい小さな作品だが、優しい雰囲気に満ちていて、気持ちよく観られる映画だった。

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