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2006/12/04

ラヴェンダーの咲く庭で

監督:チャールズ・ダンス
出演:ジュディ・デンチ/マギー・スミス/ダニエル・ブリュール/ナターシャ・マケルホーン/ミリアム・マーゴリーズ/デヴィッド・ワーナー

30点満点中16点=監4/話2/出4/芸3/技3

【老女と青年の出会い、生まれるもの、生まれないもの】
 ひなびた港町で暮らす老姉妹・ジャネットとアーシュラは、海岸に打ち上げられた青年を助ける。彼の名はアンドレア。ドイツ語しか話せないポーランド人の彼を手厚く介抱するうち、アーシュラの心の中には、報われずに終わった昔日の恋が蘇る。ジャネットに呆れられながらも、バイオリンを美しく奏でるアンドレアへの想いを募らせるアーシュラ。しかしアンドレアは、ロシアから絵の修行に来ている美女オルガとの仲を深めていくのだった。
(2004年 イギリス)

【見どころの少ない作品、かも】
「これ、あの“ピアノマン”騒動のときに『状況が似ている』と話題になった作品ですね」
「ん~、たいして似ているとは思えないというか、かなり違う」
「アンドレアは記憶喪失じゃありませんしね」
「それと『遭難した外国人』という立場にあるアンドレアに対して、誰も状況改善策を取ろうとしないでしょ。身元の照会とか、通訳を探したりとか、アンドレアに何かを訊き出そうとするとか、何もない。戦争が迫っているという差し迫った状況であることを割り引いても、ちょっと不自然。結構な事件のはずなのに、なぁんか悠長」
「事件うんぬんよりも、身元すらわからない青年に恋心を描く老女の心情を描きたかった、ということなんでしょうけれど……」

「でも描けてないんだよね。アーシュラの心の中に迫っていかない」
「そういうことを示す印象的なシーンがありませんよね」
「出てくるのは、ようやく最後のほうでしょ。アンドレアの髪を拾ったり」
「彼が去った後のベットに寝てみたり」
「そんな“恋する人の様子”が前半から中盤にもう少しあればね、テーマもハッキリしたのに」
「ええ、現状では『何がしたいの?』というダラダラ感が漂います」
「あとさ、アンドレアと村人との交流の様子もまだまだ不足している。身元もわからない、過去もわからない、何か思い詰めている顔もする、でも真面目で陽気で音楽好きでいいヤツじゃん、受け入れてやろうよ、という空気の描写があって然るべきでしょ」
「それがあってはじめて、アンドレアがバイオリニストとして踏み出そうとする姿に、応援と無念とを重ねられるわけですよね」

「そう。いまのままだとさ、アンドレアって、ただの得体の知れない怪我人にすぎない。いや、それでもいいんだけれど、だとしたらラスト近く、アンドレアのために村人たちが集まるシーンに納得ができないよね」

「なんだかストーリー構築に対する文句ばかりですが、いいところは?」
「演出というか、“作り”はいいよね。時おり意味なくスローモーションが挟まれるのはいただけなかったけれど、全体に芝居と映像のバランスがいいと感じた。ジュディ・デンチとマギー・スミスが見せるお芝居をたっぷりと映しつつ、かといってバストアップだけとか、1カットでいろいろやらせたりとか、そういう冗長な作りに陥るのを避けている」
「演技を大切にしながらも、きっちりとカットを割って、見せるべきものを画面の中心にちゃんと据える、という作りでしたね」
「その点に好感が持てた。役者出身の監督だからこその配慮といえるのかも知れないね」

「あ、家政婦のドーカスおばさんって、『ハリポタ』のスプラウト先生だったんですね」
「ジュディ・デンチもマギー・スミスもダニエル・ブリュールもナターシャ・マケルホーンも、以前に観た映画と違う顔を見せてくれる。そういう面白さはあるけれど、見どころの少ない映画だったかも知れない」

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2004年 イギリス 原題:Ladies in Lavender 原作:ウィリ [続きを読む]

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