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2006/12/20

ファイナル・カット

監督:オマー・ナイーム
出演:ロビン・ウィリアムズ/ミラ・ソルヴィーノ/ジム・カヴィーゼル/ステファニー・ロマノフ/ジュヌヴィエーヴ・ビークナー/トム・ビショップス/ミミ・カジク

30点満点中15点=監3/話2/出3/芸3/技4

【記録された記憶と、それを操る者】
 アイテック社が開発したゾーイ・チップは、頭に埋め込むことでその人の全生涯を記録する新技術。死後に編集された記憶・記録は『リメモリー』と呼ばれる追悼上映会で遺族たちに公開されていた。反論も大きいが、アラン・ハックマンは名うての編集人(カッター)として活躍する。ある日、彼はアイテック社の顧問弁護士バニスターの記憶編集を担当することに。だがアイテック社の不正を暴こうとする勢力が、アランに迫ろうとしていた。
(2004年 カナダ/ドイツ)

【問う映画としては認めるが、楽しめない】
 本編中でも述べられている通り「いま話していること経験していることを相手(の頭の中にあるチップ)が勝手に記録している」というのは、確かに不快かも知れない。家族や友人との幸せな思い出ならともかく、人生の半分は忘れてしまいたいことでできていたりするわけだし。ましてや自分の知らないところで自分の思い出が他人に編集されるってのは、ゾゾゾの極み、である。チップを頭に入れた本人は、その時点ではもう死んでいて恥ずかしい思いをしなくてすむが、遺された者は「自分に関する思い出を他人がカットする」ということに耐えなければならないのだ。
 また、記憶は重層的であると同時にキーワードでカテゴライズされうる定型的なもの、というのも、考えようによっては恐怖だ。角度によってどのような見かたもできる、というのも真理だろう。自分が特別だと思っていたことが、編集のプロから見ると「またコレか」というありきたりなものだったりするのかも知れない。あるいは自分が常識だと思っていたことが「うわっ、こいつ、こんなことやってる」だったりするのかも知れない。

 そういう皮肉が効いている内容、「記憶は誰のものか」「記憶は何のために存在するのか」を問う作品であるとはいえるだろう。アイディアはなかなか面白いし、考えるモトにもなる。が、1つのアイディアをシナリオあるいはフィルムにする際のプロセスが、詰め切れていないとハッキリわかる仕上がりだ。

 たとえば、特定の(人から摘出した)チップはかなり重要なものであるはずだが、扱いがかなりぞんざい。それとわかるカバンで持ち歩いたり編集室にあっさりと他人を入れてしまったり、カッターたちにプロフェッショナリズムが欠如している。
 プロフェッショナリズムといえば、アランがいかに優秀なカッターであるかも印象的に示されないし、アイテック社の背景や役割、アイテック社とカッターたちとの関係など“SF的な厚み”を増すために盛り込まなければならないことが相当に割愛されている。かと思えば状況説明はセリフに頼っている。

 いいところもあるのだ。バニスターとその娘イザベルとの関係をすべて描かず示唆するだけにとどめた点、記録を妨害するための工夫など、ディテールや演出に光るものはある。カメラのまわしかた、カットのつなぎかた、挿入される記録映像など、テンポのよさがあり、また「アランはどのような行動をとるか」に焦点を絞ったことでストーリーもわかりやすく、最後まで飽きずに観ることができるものになっている。

 が、SFサスペンス・エンターテインメントの顔をしていた本作、ラストにいたってエンターテインメントであることを放棄する。というか、謎と思われていたもの、キーとなると感じていたものが実はそれほどたいしたものではないと示され、あるいは解決されぬまま残されて「いや、これって楽しんでもらったりハラハラしてもらうものじゃなく、あくまで問題提起のためのお話ですから」という顔でプイっと終わる。

 それだったら、そういう作りがあるだろう。ま、安っぽいオチをつけられるよりよっぽどマシだし、前述の通り問題提起としてはある程度成功しているとは思うのだが、この突き放しかたはいただけない。たとえば『エターナル・サンシャイン』(ミシェル・ゴンドリー監督)なんか、同じように「記録は誰のものか」をテーマとしていながら問題提起と映画としてのまとまりを両立させていたぞ。

 大学で映画を学んだ若手の劇場用長編デビュー作(脚本も)なんだとか。キャリアの浅さや若さのせいだけとは言い切れないだろうが、なんとなく、一発勝負のアイディアをまとめ切れなかった稚拙さに自主製作っぽい空気を感じた、そんな作品だった。

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