カレンダー・ガールズ
監督:ナイジェル・コール
出演:ヘレン・ミレン/ジュリー・ウォルターズ/シアラン・ハインズ/ジョン・アルダートン/ペネロープ・ウィルトン/セリア・イムリー/ジェラルディン・ジェームズ/リンダ・バセット/フィリップ・グレニスター
30点満点中17点=監4/話3/出3/芸4/技3
【田舎町で暮らすオバサマたちの発奮とハプニング】
英ヨークシャーの、緑に囲まれた田舎町。女性連盟ネイプリー支部の会合に集まる主婦たちは、ブロッコリーの育てかたや敷物の歴史を学び、つまりは純朴で生真面目で退屈な日々を送っている。その中のひとりクリスは、親友アニーが夫を亡くしたことを受けて、何かできないかと考え始める。「私たちのヌード写真を来年のカレンダーにしよう」という彼女の提案は、田舎町にとどまらず、イギリス全土に、ハリウッドにも話題を提供することに。
(2003年 アメリカ)
【自己実現の実際を描いたコメディ】
たとえば「もう55歳よ。いまやらなくて、いつやるの」といったセリフや空港カウンターで受付に噛みつくシーンなどで、おばちゃんという存在そのものを肯定したり否定したりしてみせる。あるいは、気ままに見えるおばちゃんたちにもそれぞれ抱えているものがあると教える。でもこれは単に「ヌード・カレンダーを作った素晴らしきおばちゃんたち」を描いた映画ではない。
ヌード・カレンダーを作ったおばちゃんたちを題材にしながらも、実は「自己実現と、その付随事項」という人類普遍のテーマに迫ろうとした作品だろう。
映画でたびたび取り上げられるテーマ=自己実現。何かを成し遂げよう、それによって自分の存在証明にしよう、という人々の姿を捉えるストーリーは、いつも清々しい。
ただし本作では、自己実現のための歩みが周囲にどう捉えられ、どんなふうに“キワモノ”扱いされるかも見せる。と同時に、それでも自己実現を果たすためには、なによりもプライドと思いやりが大切であり、それを見失ったときに思い出させてくれるのもまた周囲の人々であることを伝える。
そう、いま自分がどこに、誰とともにいて、何をしているのか、どんな役割を果たすべきなのか。自分は他人からどう見られていて、それを気にするべきなのか気にせずに進むべきなのか。そうしたことをしっかりと把握したうえで、光のほうへ顔を向ける。そこから自己実現は始まるのだ。
つまり、いつもヒマワリでなければならないってこと。
作りとしては、舞台の見せかたがいい。スカっとせず、ちょっとくすんでいて湿っているのはイギリス風。そのうえで、色、明るさ、空気感など「その場所の見えかた」に気を配った撮影だ。
カレンダーの出来栄えも、田舎の女性連盟が作ったもの、という範疇からハミ出さない分相応のもので、それでいてひとりひとりが(あくまでもおばちゃんなんだけれど)可愛らしく撮れている。ヒマワリの扱いもいい。
で、男どもは、そんなおばちゃんたちの気ままな自己実現に振り回されるわけだけれど、でも、ちょっとした気配りや理解、あるいは「女性も花も、盛りを過ぎても咲き誇る」なんていう素敵な言葉で、彼女たちを支えることだってできる。
自分自身の自己実現を果たすだけでなく、愛する人の自己実現をそっとサポートすることもできる。そんな男でありたいものである。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント