ビヨンド the シー ~夢見るように歌えば~
監督:ケヴィン・スペイシー
出演:ケヴィン・スペイシー/ケイト・ボスワース/ジョン・グッドマン/ボブ・ホスキンス/キャロライン・アーロン/グレタ・スカッキ/ブレンダ・ブレシン/ウィリアム・ウルリッチ
30点満点中17点=監4/話2/出4/芸4/技3
【夭折の歌手ボビー・ダーリンの人生】
心臓に病を抱えるボビーは、母の手ほどきで音楽の才能を伸ばす。やがてジャズ・シンガーとしてデビューした彼は、マネージャーのブンブン、義兄チャーリーらとともに売れっ子への道を歩み、夢に見た高級クラブ“コパ”のステージにも立つようになる。数々のヒット曲、映画への進出、女優サンドラとの出会い、そして失意……。実在の歌手ボビー・ダーリンの半生をケヴィン・スペイシーの監督・主演・脚本・製作・生歌で描いた伝記映画。
(2004年 アメリカ/ドイツ/イギリス)
【役者と演出は一流だが、ストーリーが薄い】
ケヴィン・スペイシーは敬愛すべき俳優のひとり。たとえば本作では、さも自分の持ち歌であるかのように、軽やかにスウィングしてみせる。こういうのを“芸”っていうんだよな。
監督としても一定以上の力量を示した。間の取りかた、映画らしいシーンの切り替え、'50~'60年代のミュージカルをしっかりと踏襲した絵作りや背景に気を配った構図など、見た目に楽しい映画として仕上げている。
が、ストーリーの点ではイマイチ。現在のボビーと少年期のボビーとを対話させてお話を立体的にしたのはよかったのだが、結局のところボビーが「何を目指し、何になろうとし、何を成し遂げたのか」が、本人を知らぬ者にとってはわかりにくい脚本になってしまっている。
いや「歌うこと・聴かせること・聴くことの本質は、楽しむことである」というメッセージは伝わってくる。
ただ、その語り手であるボビー自身のアイデンティティが「ただ歌っているオヤジ」にとどまり、成長、停滞、周囲との摩擦などの描写が舌っ足らずで、どうもボビーという人物に「ノって」いけないのだ。特に、妻サンドラがどれくらい彼にとって大切な存在であるかについては完全に描写不足、結果としてふたりとも薄ぅい人物、薄ぅい夫婦に思えてしまう。
また、どうしても“ボビーの手の届く範囲”でストーリーが進み、広がりや奥行きを欠くという伝記映画ならではの欠点からも脱却しえていない。
まぁ前述の通り、ケヴィン・スペイシーは抜群だし、少年期のボビー役ウィリアム・ウルリッチ君も可愛いうえに芸達者。ケイト・ボスワースは上手に痩せてビックリするくらいキレイになっていて、ジョン・グッドマンは相変わらずのジョン・グッドマン、めずらしく善人(しかも超のつく)を演じたボブ・ホスキンスも味がある。
と、良質な役者はそろっている。
ストーリーに“厚み”があれば秀作なんだけれどなぁ、と、惜しい思いをさせられる映画だ。
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