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2007/02/08

エドtv

監督:ロン・ハワード
出演:マシュー・マコノヒー/ジェナ・エルフマン/ウディ・ハレルソン/エレン・デジュネレス/サリー・カークランド/マーティン・ランドー/エリザベス・ハーレイ/デニス・ホッパー/ロブ・ライナー

30点満点中18点=監4/話4/出4/芸3/技3

【テレビがひとりの男のプライベートを生中継】
 視聴率低迷にあえぐケーブルテレビ局のディレクター・シンシアは「演出も台本もナシ。普通の人の生活を24時間ぶっ通しで追う」という企画で起死回生を図る。“主役”に選ばれたのは31歳のビデオショップ店員エド。エド本人のほか、兄のレイ、その恋人のシャリー、母ジャネット、母の再婚相手アルなどを巻き込んだ超ドキュメンタリーがスタートする。プライバシーを奪われるのと引き換えに人気者となっていくエドだったが……。
(1998年 アメリカ)

【笑いの中で、すんごく重い質問を次々とぶつけてくる】
 観る側もテレビ局の上層部も「ホントにこんな企画が成立するの?」という不安を引きずる序盤。ところが番組開始から2~3日もたつと、この“エドtv”の視聴者と同じように、僕らも『エドtv』に引き込まれていく。
 なさそうでありそうな、ありそうでなさそうな、市井の人々の、なんてことのない(痴話喧嘩を主とする)出来事。「あるある」的な、あるいは「をいをい」的な苦笑をたっぷり散らして。

 こういう「人がある状況に置かれたとき、どう考え、どう行動するか。その結果その人はどう変わるか」という(ある意味“それだけ”の)お話をやらせたら、ロン・ハワードは実に上手い『シンデレラマン』はドッチラケだったが、『スプラッシュ』や『ザ・ペーパー』、『アポロ13』なんかがそういう作品だった。
 やや都合がよすぎて説明的すぎる展開/シナリオという気もするけれど、ちょっとしたことで歯車が狂っていく人生を、まさにテレビサイズできれいにまとめる。カットからカット、シーンからシーンへの移行のテンポがよくって心地よい。

 キャスティングがまたいいんだね。デニス・ホッパーからウディ・ハレルソンとマシュー・マコノヒーの兄弟が生まれるって、まんま“悪ガキから悪ガキ”じゃん。この3人、絶対おんなじ酒を飲んでおんなじ整髪料を使ってるだろ。エリザベス・ハーレイの色気にクラっとしつつも、結局は、可愛いんだけれど完璧ではないジェナ・エルフマン(どっかで見たと思ったらダーマだったか)というのが、いかにも。

 ブラウン管の中で、それっぽい人々があたふたとする、その日常に、ふんだんに埋め込まれている皮肉が、このコミカルな作品を「実は重いもの」にしている。
 他人から評価される自分、自分自身がどう見られているかという自覚、マスコミというフィルターを通して評価されることの恐ろしさ、見た目がキュートかどうかで変わる人生、人生におけるチャンスの意味、どうでもいいことに対して真剣に議論する人間の可笑しさと愚かさ、見たいものをあまさず見ようとすると見たくないものまで見せられてしまうという事実、他人に自分の人生を決められたり他人の人生に干渉することの重大性、リモコンひとつ・指一本でチョイスされる創作物……。
 およそ、ドキュメンタリーやテレビ界を題材としたときに詰め込める要素をすべてビッシリと詰め込んである。

 で、当然のことながら行き当たるクエスチョン。もし自分がこんな番組の主役に抜擢されたら? 無理っス。他人に見せたくない部分が多すぎます。見せたって、たいして面白くないだろうし。
 もうひとつのクエスチョン。自分はこういう番組を観るか? 素人参加型リアリティものは昨今の流行、いくつか観たこともあるけれど、「ノンフィクションに思えて実は『テレビ局が見せたいもの』でしかない」ことがハナにつくようになって、いまではすっかりご無沙汰だ。ましてや24時間ぶっ通しなんか、考えただけでもゾっとする。
 本作内の随所で示されているように、すべての人がそれぞれの生活や抱えている問題を持つ。植毛、ゲイのカップル、夫婦関係、歯の治療……。他人の人生に丸々つきあっているヒマなんてないはずだ。

 とはいえ、この手のリアリティものに見入ることが下等かというと、そうではないようだ。他人の人生を覗き見することと、スポーツ中継に熱中することに違いなんてないんだよ、と、本作はシニカルに訴える。隅から隅までしっかり「演出」された劇映画を観ることも、結局は他人の人生の覗き見と大差ないんじゃないの、という疑問も浮かんでくる。
 笑わせながら、なかなかに痛い槍を突きつけてくる映画である。

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コメント

はじめまして。
髭ダルマLOVEと申します。

>なさそうでありそうな、ありそうでなさそうな、市井の人々の、なんてことのない(痴話喧嘩を主とする)出来事。「あるある」的な、あるいは「をいをい」的な苦笑をたっぷり散らして。

そうなんです!笑いの中にある妙なリアリティ。すごく良く出来てます。

>キャスティングがまたいいんだね。

そうなんです!そうなんですよ!!キャスティング光ってました!


何となくジャケットが気になって観たんですが、思いのほかよかったです^^

TBさせてくださいね★


投稿: 髭ダルマLOVE | 2007/04/10 00:28

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