シティ・オブ・ゴッド
監督:フェルナンド・メイレレス/カティア・ルンド
出演:アレクサンドル・ロドリゲス/レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ/セウ・ジョルジ/フェリペ・ハーゲンソン/マテウス・ナシュテルゲーレ
30点満点中20点=監4/話5/出4/芸3/技4
【神に見捨てられた者たちが住む街】
リオ・デジャネイロ近郊に作られた“神の街”。それは名ばかりの、赤土にまみれ、貧困と犯罪がはびこるところ。ここで生まれたブスカペは、銃をパンツにしのばせマリファナを口にするものの、悪に染まり切れず、カメラマンになることを夢見ていた。いっぽうリトル・ダイスは、兄貴分たちの死をきっかけに頭脳と暴力で頭角を現し、強奪、麻薬売買、殺人を繰り返してスラム街のキングへと一歩ずつ上り詰めていく……。
(2002年 ブラジル)
【パワーと完成度に身をまかせる】
小屋とも呼べる質素な住居を覆うように、赤い土と青い空が広がる。一見して「何もない」ところとわかる、神の街。使い古されたクルマと、神に見放された人々が、ただ集う。
リオのスラムには血と硝煙のニオイが始終漂っていて、年端も行かぬ子どもすらもその悪臭を身にまとう。
銃とドラッグとレイプが日常として存在する、こんなところに生まれた者には、選択肢などない。理不尽な未来を強要され、奪うことと生きることとがイコールで結ばれている暮らしを続けていくほかない。
悪による単独支配という安全、あるいは「凶暴な人」が存在するのではなく人の中に凶暴な部分があるのだということの示唆、運命の皮肉……。
たっぷりと時間を割いて「こういう世界が神の足元にあるのだ」ということが強烈なまでに描かれる。そして、収まるべきところへと収まる。
そう、実に強烈な物語だ。
描かれる事実・事件の衝撃性に負けないように、画面もまたショッキングであることを優先して作られる。
解像度の高い絵によるカットを、短く神経質に積み重ね、あるいはストップモーションや早送りや俯瞰やコマ落としを畳み掛けて、一気に場面転換を果たして……と、CM畑だという監督の真骨頂ともいえる絵作り。
また、クドクドと会話や独白を連ねたかと思えば、残虐なシーンは台詞ナシであっさりとすませて、その対比がかえって衝撃を強める。絶妙のストーリーテリング。
単にドロドロかつドキュメンタリーライクにスラムの現実を詰め込んだ作品かと思っていたのだが、意外なまでに「映画としての完成度」が高いことに驚かされる。事実をもとにした作品にしては珍しく、ちゃんと「映画している」。そのせいで、誰がどんな風に死のうが気にならないほどだ。
いや、気にならないというと嘘になるが、少なくとも観る者は、ブスカペと同じように“目撃者・傍観者”の立場から逸脱することを許されず、リオの現実と、この映画の圧倒的な迫力に、ただ身をまかせるほかない。干渉はできず(しろといわれても御免被りたい世界だが)、ただ鑑賞するだけ。それが快感。
で、とりあえずブラジルには行きたくない。
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