レオポルド・ブルームへの手紙
監督:メヒディ・ノロウジアン
出演:ジョセフ・ファインズ/エリザベス・シュー/ジャスティン・チャンバース/デイヴィス・スウェット/デボラ・カーラ・アンガー/ジェイク・ウェバー/メアリー・スチュアート・マスターソン/デニス・ホッパー/サム・シェパード
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4
【15年の服役を終えたスティーヴンが書き続けるもの】
罪を背負って生まれてきたと自覚する小学生のレオポルドが、国語の授業で書いた「囚人さんへ」という手紙。殺人罪による15年の服役を終えたスティーヴンは、ヴィックが経営するダイナーで働きながら、その手紙への返信を綴り続ける。いっぽうレオポルドは、真っ当に生きる気力を失った母メアリーとの生活の中で苦悩していた。ダイナーの支配者かのように振舞う横暴な男ホレス、メアリーとの姦通を繰り返すライアンが、ふたりを責める。
(2002年 イギリス/アメリカ)
【薄くて抑揚のない、退屈な映画】
罪を犯したひとりの男が、殺され、再生するまでを描いた物語。が、お話としてはたいしたことはない。抑揚なく、ひたすら文字を綴り続けるだけ。キーとなるはずの“母の愛”も、あるいは文学という拠りどころも描写が足りずに、スティーヴンの言葉はただ慰めに終始する。
スティーヴンやレオポルドに関わる人々、特にヴィックとメアリーのキャラクターについての掘り下げがまったく足りないので、そういう薄さもストーリーに奥行きを欠く因となっている。
そんなグダグダな話を、この監督は、凝った構成と撮りかたでまとめようとする。時制の移動と融合、明かりや色合いの強調、縦横へ大仰に動いたりダイナミックに寄ったりするカメラ、シンメトリーに切り取られる建物、低く暗く静かに流れ続けるBGM……。まるでキング原作といわれても信じてしまいそうなほどサスペンスフル、あるいはアーティスティックな雰囲気。
そのミスマッチは化学反応を生まず、ただスティーヴンの内面を表層的になぞるだけの映画へと収束する。ひょっとすると、まずスタイルありき、そこへ持ってきたシナリオがコレだった、ということなのかも知れないが、とにかく「見た目だけで、内容が観る者の体内に入ってこない」という仕上がりとなってしまっている。
キャスティングは、渋いけれど意外と豪華。しかもそれぞれがそれぞれの役柄を手堅く演じる。そのためイライラが募ることはなく、最後まで観られることは観られるのだが、退屈な1時間40分である。
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