ドミノ
監督:トニー・スコット
出演:キーラ・ナイトレイ/ミッキー・ローク/エドガー・ラミレス/リズ・アッバシ/デルロイ・リンドー/ジャクリーン・ビセット/モニーク/アイアン・ジーリング/ブライアン・オースティン・グリーン/ダブニー・コールマン/ルーシー・リュー/クリストファー・ウォーケン
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4
【美貌の賞金稼ぎが巻き込まれた、裏のある事件】
映画スターの子として生まれ、不自由なく育ったはずの少女ドミノ・ハーヴェイ。が、手段を選ばぬ荒っぽい賞金稼ぎとなった彼女は、師匠であるエド、仲間のチョコやアルフのもとで腕を磨き、TVのドキュメンタリー番組に取り上げられるほどの存在となる。今回、保釈保証人クレアモントから請け負ったのは、強奪された大金を取り戻すという仕事。犯人の居場所も判明しており、簡単なはずのミッションだったが、そこには“裏”があった。
(2005年 アメリカ/フランス)
【カッコよさだけが突出した作品】
よくも悪くもトニー・スコット節が全開。いやもう、ホントに真っ当なカットが1つとしてないって映画ですから。
ブレ、ズーム、短すぎる1カット、デジタルライクな色合い、オーバーラップ、スローモーション、ぐるんぐるんと回るカメラ、くぼんだ目のところだけが闇になっている露光……。
とにかくあらゆる手段を駆使して“スタイリッシュ”な絵/場面が作られる。これはもう監督ひとりの仕事じゃなくて、撮影と編集とを含めた集団での力技。
ビデオクリップでも、ここまで派手なモノはそう多くない。ある意味、ストーリー映画としてギリギリのラインを保ちつつどこまでブっ飛んだ撮影と編集を実現できるかという挑戦の、1つの到達点。いや、ギリギリのラインを踏み越えてしまっているかも。
ただ、そのギリギリのカットの中に収まる人物が、すこぶるカッコイイ。
特にエドガー・ラミレスね。惚れた女の手を汚したくないという一心で眉ひとつ動かさず人質を傷つけるチョコ。かっけー。
もちろん突っ張ったドミノ=キーラ・ナイトレイは美しいし、いい感じで復活してきたミッキー“やさぐれた感じがステキ”ロークのエドも。みんな上手い具合にフレームの中に収まるんだわ。
人物だけじゃない。バスが吹っ飛ぶさまだってカッコいい。
ただまあ、カッコよさだけが先走って「絵作り(と音と演技、その他もろもろ)でお話を魅せる」という、映画ならではの楽しみへと至っていないのも確か。
それに、ストーリーも問題。本来あるべきはずの「ドミノの成長物語」的要素が中途半端に抑えられてしまっているのが、大きな傷。
この女性がなぜ、何のためにバウンティ・ハンターになったのか、どうやって腕を磨いたのか、仲間のことをどう思っているのか、母親に対して抱いている想い……といったことにほとんど触れられておらず、彼女のアイデンティティが不明確なものとなってしまっている。人間を描くつもりが描けていないという体たらく。
中心となっている「裏のある事件」がそれなりに面白いので、いっそのことその「事件」に絞った作りにすれば、スタイリッシュなアクション映画として評価できたのに。
見た目はカッコイイけれど、それ以上ではない作品だ。
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